2016年12月10日

みんな完全に必要とされている[ブルーエコノミー]




グンター・パウリ博士(Dr. Gunter Pauli)は、こんな話からはじめた。

ある牛飼いがメス牛を、肉屋につれていって屠殺した。

そのメス牛は、2週間後に出産予定の子牛を孕んでいた。メス牛はお腹のなかの子牛もろとも殺されたのだった。



We would consider that person a horrible person.

「私たちは、その人を残酷な人(a horrible person)だと思うでしょう」とグンター博士は言う。

We don't understand why someone could be so barbarian not to let the calf live first.

「まず子牛を生かそうともしないなんて残酷なこと(so barbarian)が、どうしてできるのか理解できないでしょう」



さて、この話を念頭に、次の話を聞いてみよう。

海では毎日、大量の魚が捕獲されている。

捕られる魚の12〜15%は、卵をはらんだメス(females with eggs)である。

私たちが魚をさばいた時、卵が入っていると喜びを感じる。







We think it's normal with a fish, but we think it's a barbarian with an animal.

「魚であれば普通のことで、動物だと残酷だと思う」とグンター博士は言う。

What's wrong with us?

「私たちはいったい、どうしてしまったのでしょう」

We have to realize the way we're behaving lacks all ethics.

「私たちは、自分たちの行動にまったく倫理(ethics)が欠如していることに気づくべきなのです」

Because we are elephants in the porcelain shop.

「なにしろ私たち人間は、陶磁器店に迷い込んだゾウのようなもの」

Our tail waggles and we have no idea how much we're destroying.

「シッポを振り回しては、自分たちがどれほど多くを破壊しているかも知らないのです」







農業や漁業をサステナブル(持続可能)なものにするためには、メスを殺さないほうがいいということを私たちは知っている。子供を産ませたり、ミルクを得られたりするほうが理にかなっている。

しかし、実際の経済現場では必ずしもそうはなっていない。意識せずに振り回したシッポが、生命の網(the web of life)をかき乱してしまっている。



My focus is on changing the rules of the game.

「わたしが注力しているのは、物事のやり方を変えることです」とグンター博士。

not using the rules of the globalized economy.

「グルーバル化経済のルールをつかわずにね」

We have a few methodologies that allow us to see the turnaround.

「私たちには、そういった方向転換(the turnaround)をする方法論がいくつかあります」



たとえば電池の例。

高性能なリチウム電池が発明され、誰もがリチウムの採掘に夢中になった。

The lithium is gonna come from the high mountains of Bolivia, which have the largest deposits in the world.

「リチウムは、世界最大の産出地であるボリビアの高地で採掘されます」とグンター博士。

We're gonna destroy that ecosystem in order to do what?

「(リチウム採掘のために)生態系を破壊するのは、いったい何のためでしょう?」



ニッカドからリチウムへ、より高効率な電池が発明されるたびに、資源の採掘場所は変わっていく。しかし、それでは堂々巡りとなってしまう。たとえ新しい資源が生態系への負荷を減らすとしても。

Doing less bad is bad.

「悪影響が以前より小さくても、悪いことに変わりありません」とグンター博士。

We have to say that what is bad needs to be eliminated.

「悪いものは完全に排除すべきだ、と言わざるをえません」

We have to put ourselves in the most creative mind --

「私たちは、最も創造的な考え方をしなければなりません」

That is "the nothingness".

「それは『無』という考え方です」

We don't substitute something with something else.

「なにものかを別のなにかで置き換えるのではありません」

We substitute something with nothing.

「有るものを無いという状態にするのです」

Instead of saying we're going to start funding batteries that are more efficient, we're saying , "No batteries."

「より高効率な電池への投資をはじめるのではなく、『電池はいらない』と言うのです」

There's nothing.

「電池が無い」

And now we're in this nothing, imagine how it still works.

「無い世界にいたとしても、うまくいっている様子を想像してください」



こうした発想こそ、グンター博士の提唱する「ブルーエコノミー(Blue Economy)」。グローバル化経済のルールをつかわずに示す、新たな未来像である。



You use what you have.

「すでに有るものを使うのです」

You focus on generating value.

「(見出されていなかった)新たな価値に着目するのです」

You increase so much value with what you have.

「すでに有るものから、ずっと多くの価値を引き出せるのです



If you have the nothingness, the substitution of something with nothing.

「無という意識をもって、あるものを無に置き換えれば」

then you will not to through the trap of the substitution effect and have undesired consequences.

「代替効果のワナに陥ることも、望まない結果になることもないでしょう」

In the blue economy, we wanna create a sense of abundance.

「私たちはブルーエコノミーを通じて、豊かさの感覚を生み出したいのです」







たとえば失業者。

経済が「できる人(the ables)」を選んでいく結果、排除されてしまった人たち、それが失業者。



We have an economic system that is built on exclusion.

「私たちの経済システムは、排除(exclusion)の上に成り立っています」

By having this economic logic that unemployment is a need for having flexibility in the market.

「市場に柔軟性をもたせるためには、失業が必要だという経済論理があります」

In nature, every one is employed , no one is unemployed.

「でも自然界においては、誰にでも仕事があります。仕事のない人などいません」

everyone contributes to the best of their capabilities.

「誰もがそれぞれの能力を最大限に発揮しながら、全体に貢献しているのです」



We know that the worst will hit.

「皆さんもご存知のように、最悪の事態というのは起こるものです」

We know the tsunami will come, we know the typhoon is around the corner.

「津波もくれば、すぐそこに台風もきている」

You need resilience.

「必要なのは回復力(resilience)です」

You need to be able to bounce back.

「私たちには、立ち直ることのできる力が必要なのです」

That you can't do on your own, and that means you have your network, your web of life.

「一人ではどうにもできませんが、あなたにはネットワークが、生命の網(the web of life)があるのです」



The globalized economy already made an exclusion of the poor.

「しかしグローバル化経済はすでに、貧しい人を排除しています」

経済理論では、排除された人たちがたとえ市場に柔軟性(flexibility)をもたらすとしても、そのせいで綻(ほころ)んでしまった生命の網は十分な回復力(resilience)を維持することができない。



We recreate the value.

「私たちは、(排除されたものにも)新たな価値をつくりだすのです」

You cycle it always by giving more and more value.

「価値をあたえつづけ、どんどん循環させていくのです」

You celebrate life by cycling.

「循環させることこそが、生命を讃えることにつながるのです」

And that gives a resilience in the system.

「そうすることで、社会に回復力がそなわっていくのです」

We have the ethics that says there is full employment only.

「私たちは、みんな完全な必要とされている、という倫理をもてるのです」

The ethics is what we're missing.

「その倫理こそが、私たちの忘れているものなのです」





もう一度、繰り返そう。



In nature, every one is employed , no one is unemployed.

「自然界においては、誰にでも仕事があります。仕事のない人などいません」

everyone contributes to the best of their capabilities.

「誰もがそれぞれの能力を最大限に発揮しながら、全体に貢献しているのです」

In the blue economy, we wanna create a sense of abundance.

「私たちはブルーエコノミーを通じて、豊かさの感覚を生み出したいのです」









(了)






出典:『English Journal』2016年1月号



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posted by 四代目 at 06:49| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする