2011年09月07日

金をも凌ぐ輝きの「スイスフラン」。高すぎる価値を下げることはできるのか?

世界経済の前途をおおう「暗雲」が分厚くなるにつれ、「金(Gold)」の相場は急騰した。

そして、その「金」の価値に負けずとも劣らないのが、「スイスフラン(スイスの通貨)」である。

しかし、現代において、自国通貨の価値が上がるということは、マイナスの意味合いしか持たない。なぜなら、自国で生産するモノの価値が高くなりすぎて、誰も買ってくれなくなるからだ。



歴史を作りながら「高値」を更新し続けるスイスフランを傍観しているわけにはいかない。

スイス国立銀行(SNB)は立ち上がった。「為替介入」である。8月上旬のこの介入、じつは一円(1フラン)も使わなかった。いわゆる実弾なしの「口先介入」である。

スベリまくっている日本の口先介入とは違って、スイス国立銀行はよほどに「口が達者だった」。あっという間に効果を上げた。ガクンとスイス・フランの値段が下がったのだ。その下げ幅は、日本が4兆5,000億円を注ぎ込んだ実弾介入以上の効果を上げた。



スイス国立銀行は、いったい何と言ったのか?

「スイスフランをユーロにペッグ(固定)させる」と言ったのである。

小さな船も、大きな船に繋げば安定する。スイスフランをユーロにくっつければ、スイスフランの過度な値動きを抑えることができるというわけである。

実際にペッグ(固定)されたわけではないが、この「口からデマカセ(?)」は奏功した。



かつて、スイス国立銀行は「為替介入」で「巨額の損失」を出している(2009-2010)。その時の国内批判も痛烈であった。

その手痛い経験からか、手を変え品を変え、スイス国立銀行は巧みな「介入」の技を編み出したのかもしれない。



しかし、スイスフランはまたしても高値圏へと押し戻される。

たまりかねたスイス国立銀行の打ち出した次なる新技は…、なんと「無制限介入」である。

ユーロに対する「上限」を1.20と設定し、この数字を維持するために「無制限にユーロを買う」というのだ。もはや「中国」状態であり、ペッグ(固定)状態である。

この発表を受けて、昨日のユーロ/スイス相場は、目標の1.20まで「急落」した。



日本にとっても、自国通貨高は「対岸の火事」ではない。

昨年9月の介入は2兆1,250億円(83円前後で介入)、先月は4兆5,100億円(77円前後で介入)。しかし、その甲斐なく、円高圧力は依然強い。

しかし、そろそろ円高も潮時を迎えるという意見も多くなってきた。なぜなら、秋にかけては輸入業者のドル買いが始まるからである。

ドルが必要な人はたくさんいる。問題は買う時期である。ドルが安くなりそうならば、当然買う時期を遅らせる。しかし、業者にとっては無制限に遅らせるわけにはいかない。そろそろ買い始めないと年を越してしまう。

こうして毎年、この時期から円高圧力は和らぐ。俗に言う「晩秋の円安」である。



競争となると、「勝とう勝とう」とするのが常だが、こと為替となると、「負けるが勝ち」のような状態になっている。

かつては「美人投票」と言われた為替相場も、今は「不美人投票」になっている。

「為替介入」に関しても、国家の力は個人投資家たちに圧倒されている。

一昔前の常識から180°世界がひっくり返ってしまっている為替相場。

その先行きを予測できる人はいるのだろうか?




posted by 四代目 at 13:59| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月03日

先進諸国は「避難先」に過ぎない。「見せかけの信用」の示す危うさ。

赤字赤字の先進諸国。

日本の公的債務もさることながら、「イギリス」も負けてはいない。

昨会計年度のイギリスの財政赤字は「異常値」とまで言われ、イギリスよりも悪い数字を出したのは、アメリカ、ギリシャ、アイルランドしかいなかった。

ご存知の通り、ギリシャとアイルランドは助け舟にすがりついている。アメリカはと言えば、自国通貨の米ドルが世界の基軸通貨であるために、難を逃れている形に過ぎない。



この窮状を打開すべく、イギリスのジョーン・オズボーン財務相の打ち出した「財政赤字の削減計画」は熾烈を極めた。

ところが、イギリスの国債(通称ギルド)の利回りは「急低下」した。

利回りが低下するということは、その国に「信用」があることを意味する。イギリスの不安要素の大きさを考えれば、この国債利回りの急低下こそが異常であった。



ここに、イギリスと好対比をなす国がある。「スペイン」である。

両国は、2010年までは同じような利回り水準だった。

しかし、2010年を境にして、スペイン国債の利回りは「上昇」、イギリス国債の利回りは「低下」という全く別の道を歩むこととなった。

イギリスもスペインも同じような財政赤字を抱えているが、むしろ公的債務に関してはスペインの方が優秀であった。つまり、スペインの利回りが低下するほうが自然だったのである。

イギリスとスペインの大きな差は、ユーロに参加しているか否かである。スペインが不安視されたのは、ユーロの債務危機に引きずられた結果とも言えるものであった。



借金借金の先進諸国の窮余の策といえば、「量的緩和」が常套手段となっている。

自国の通貨を増刷して、借金を穴埋めするのである。この一見単純そうな解決方法には、「インフレ(物価上昇)」という恐ろしい副作用が伴う。

アメリカがやったように、イギリスも紙幣を印刷して借金を返したいところだが、7月のイギリスのインフレ率は、4.4%。ここ4年間ほど、目標の2%を上回る高水準が続いている。

もし、量的緩和を行えば、さらなるインフレ(物価上昇)に国民が耐え切れなく怖れがある。ロンドンの暴動再来である。



イギリスの頭の痛い点はもう一点。

「家計債務の残高が世界有数の高さにある」ということである。

家計債務の大半は「変動金利」を適用されているため、もし金利が上昇してしまえば、ローンに頼っている住宅は叩き売りの憂き目に遭いかねない。

先に述べた通り、幸いにも現在のイギリス国債利回りは、奇跡的な低水準に保たれている。



しかし、その低金利の上にアグラをかいているわけにもいかない。

イギリスには利回りを上昇させるには事欠かない材料がいっぱいあるのである。

ひとたび金融市場に混乱が起これば、金利上昇という最悪の結果を招きかねない。家計債務の多いイギリスにとって、それは国の浮沈をも左右することになりかねない。



イギリスに比べて、日本の家計は優秀である。

日本国債の利回りが世界一低いのは、莫大な個人資産のおかげとも言われている。

しかし、日本政府の借金はバカげたほどに巨額である。



いまや、先進諸国は投資家の皆様のご機嫌を伺うしかない状況にある。

新興国が急成長しているとはいえ、先進諸国は「腐っても鯛」。まだまだ資産を新興国に移すには早すぎる。

その消極的な選択の結果が、イギリス、日本、そしてアメリカの国債利回りが低く保たれている大きな理由と言われている(多くの問題を抱えているにもかかわらず)。

しかし、消極的な選択は、しょせん消極的。ちまたで言われるように「避難先」に過ぎないのである。より積極的な要素が見つかれば、簡単に流れて行ってしまいかねない。

先進諸国の現状は、「沙羅双樹の花の色」のように美しい。



posted by 四代目 at 08:50| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月15日

なぜ買われる?アメリカ国債。その背景には、ありあまる企業の現金が…。

なぜ、アメリカ国債は「格下げ」されてなお、買われ続けるのか?

「3カ月物国債の利回りは、現在わずか0.01%である」

その理由の一つは、企業が「大量の現金」の安全な預け先を探せずにいるからだという。



企業の持つ現金は、 20年前に比べると、「段違い」に増えているという。

かつては1億ドル(80億円)程度だったアメリカ大企業の現金は、いまやその150倍の150億ドル(1兆2千億円)にもなっている。



20年前、企業の現金の預け先は、「銀行」と相場が決まっていた。

ところが、現在の企業は現金の「1〜2割」しか銀行に預けていないという。

それでは、残りの現金はどこへ?

MMFやレポ取引へと向かい、その金が最終的に「アメリカ国債」へと流れている。もちろん、企業が直接アメリカ国債市場に参入することもある。



なぜ、企業は銀行にお金を預けなくなったのか?

それは、銀行預金がある額(10〜25万ドル)までしか保証されないからである。

そのため、企業にとって、銀行はある意味「危険」な預け先なのである。



そこで浮上するのが、アメリカの「政府保証」がついたアメリカ国債ということになる。

企業は、「アメリカ政府の安全性に賭けるか、それともアメリカの銀行の安全性に賭けるかという選択に直面」しているのだ。

この選択において、「格下げ」されてなおアメリカ国債を選択するのは、「完全に合理的な選択」と言わざるをえない。



posted by 四代目 at 07:58| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アメリカにお金を貸しているため、強気の中国。しかし、中国自身にも多額の隠し借金が…。

月初には「借金問題」で大騒ぎをして、一応の解決は得たものの、結局は「格下げ」されてしまったアメリカ。

そのアメリカに、一番お金を貸している国が「中国」である。

その中国は、アメリカを「借金中毒」と猛烈批判。



借金中毒と批判されたアメリカの借金は、GDP比87%。かたや、中国の借金はGDP比でたったの17%。

「格下げ」されたアメリカに対して、中国は去年「格上げ」されている。

確かに、中国は、アメリカを「身の丈にあった生活をしていない」と批判する資格があるように思える。



しかし、ここで注意しておかなければならないのは、中国には「見えない借金」があるかもしれないということである。

中央政府の借金は少ないけれども、「地方政府」が多大なる借金を抱え込んでいる可能性があるというのだ。

その「見えない借金」の額たるや、GDP比で「37%」という試算があったり、「90%」という試算があったりと、不確かながらも巨額であることが指摘されている。



それらの借金は、「2008年の金融危機を受け、中国の地方政府がインフラ建設に突っ走って」こしらえてしまったものだという。

先進国は金融危機に際して、「国が借金をして」危機を乗り越えた。

ところが、中国の場合は、国が借金をするのではなく、「銀行システムを通じて」資金調達をしたのである。

そのため、見かけ上は国の借金が「少なく見積もられている」のだという。



そんな裏事情があっても、中国の信頼は揺るがない。

なにせ、その成長力には目を見張るものがある。

「経済が名目ベースで15%成長し、GDP比26%前後の税収がある」

「勢いを増す成長率は多くの罪を覆い隠すし、欧米諸国の状況は依然、中国よりずっと悪い」



アメリカの借金は、「防衛計画、社会福祉計画」などの「後ろ向き」な出費のせいであるが、中国の借金は、より「前向き」なインフラ整備などに使われている。

「景気後退」の土俵際にいるアメリカと、これから土俵に上がろうとしている中国とでは、その先行きに雲泥の違いがある。

「年寄りの借金」と「若者の借金」では、その意味合いは大きく異なるのである。



posted by 四代目 at 07:07| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月04日

ビッグマックから見える経済。ビッグマックは「円高」ではなかった。

日本政府は、先ほど「為替介入」を実施したようだが、日本の円は、それほど高いのだろうか?

通貨の価値というのは、相対的なものであるが故(ゆえ)に、高く感じるか安く感じるかは、アナリストの間でも意見の分かれることころである。

イギリスのエコノミスト誌の「ビッグマック指数」によれば、日本円は「ぴったり適正水準」という結果になる。



「ビッグマック指数」とは?

世界各国の「ビックマック(ハンバーガー)」が、その国でいくらで売られているかを基準にして、その国の通貨の価値を測る指数である。

アメリカのビッグマックは「4.07ドル」。そして、日本のビッグは米ドル換算で「4.08ドル」。ほぼ同じ価格である。

この指数からは、決して「円高」ということはできない。



現在の通貨で最強と言われている「スイス・フラン」。

スイスのビッグマックは、なんと「8.06ドル」。アメリカのほぼ2倍の価格である。

つまり、スイス・フランこそが、とんでもない「スイス・フラン高」といえる。


一般的に、「先進国」のビッグマックは高く、「新興国」のビッグマックは安い。

これは体感的にもわかる。ビッグマックの価格は、その国の物価を代表するものであるからだ。



しかし、新興国であるはずの「ブラジル」のビッグマックは、先進国なみに高い。

ブラジルのビッグマックは、「6.16ドル」。日本とアメリカの「1.5倍」である。

日本のビッグマックが「300円」とすれば、ブラジルのビッグマックは「450円」ということになる。

かのブラジル財務省は、「通貨安戦争」と口にして、自国通貨高を嘆いたが、この値段ではそうも言いたくなるだろう。



「中国」も気になるところだろう。

中国のビッグマックは、日米の「半額」程度である。

アメリカが騒ぐだけあって、やはり「中国元」は安すぎるようだ。

bigmac1.jpg


しかし、ビッグマック指数の精度をより高めるためには、「一人あたりのGDP」を考慮する必要がある。

一人あたりのGDPでビッグマック指数を調整すると……、中国元は「適性な水準」となる(下記記事のリンク先にグラフあり)。

米ドルに対して、「わずか7%」ほど過小評価されているに過ぎず、「とてもではないが貿易戦争の理由にはならない」。



これに対して、ブラジルはGDP調整後は、より「一段と高くなる」。

オリンピック、ワールドカップ(サッカー)への期待は、尋常ならざるものがあるようだ。

日本円は、調整後も「変わらず」である。ビッグマックに限っては、「円高還元セール」は行われそうにもない。



もちろん、「ビッグマック指数」は、数ある経済指標の一つに過ぎず、参考程度にとどめておくほうが賢明である。

ただ、味気ない経済指標の中にあって、ハンバーガーという旨みタップリの指標は、世界のみんなから愛されているようだ。

今年でめでたく25周年を迎え、今や「国際基準」となり、盛んに「学術研究のテーマ」とまでなっている。




posted by 四代目 at 11:48| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする