勝手に思っていたが、そうとも限らないようだ。
カナダ中央部のノースウッズと呼ばれる広大な森は、
日本の国土の4倍という広大さ。
これほど広いと、
どっかこっかで山火事は起きるものらしい。
100年に一度は同じ場所が焼けるのだそうだ。
2005年の山火事は大きかった。
落雷に端を発し、3日間燃え続ける。
雨で火の手は収まるも、その間、5000haもの森を焼失。
残されたのは、黒焦げの木の幹だけだった。
豊かな森林は、突如として荒野となった。

しかし、そこに悲壮感はなかった。
すでに新しい生命が始まっていたからだ。
「バンクス松」という松のマツボックリは、
約50℃で傘が割れ、種子を散らす。

カナダ北部にあって、
気温が50℃を越えることは、まずない。
つまり、山火事がなければ、
この松は種をこぼせないのだ。
ということは、バンクス松にとって、
山火事は「織り込み済み」どころか、
ある意味、山火事を待ってすらいるのだ。
先の大火事で蒔かれたバンクス松の種は、
鎮火の直後から芽吹きはじめ、
6年後の現在、小さな森にまで成長した。
きっとこの森は、次の100年を謳歌するのであろう。

この地の写真を長年撮り続けている大竹英洋氏は言う。
「一つの森は終わったけれど、
それが一つの始まりだった。
悲しさはなかった。
命のサイクルとはこういうものなのだ。」
出典:NHKプレミアム8 ワイルドライフ
「カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」