2011年05月13日

石油業界は悪か? 宣戦布告するオバマ大統領



「アメリカ国民が今最も心配していること‥、それはガソリン価格だ」。オバマ大統領の言葉である。

オバマ大統領は、「国民の苦労した金で大儲けしている」石油業界と対決する姿勢を鮮明に打ち出した。「石油会社がボロ儲けしているのに、国民はガソリンポンプと格闘している」とまで言う。

実際に、今年の第一四半期決算は「エクソンモービルなど石油大手は大幅増益を達成」。ちなみに日本の石油元売り3社も、東日本大震災の被害があったにも関わらず、大幅増益である。

また、アメリカ企業のCEOの昨年の報酬は、「エクソンモービルのティラーソンCEOを筆頭に、石油・ガス業界がトップ」である。

矛先は原油市場にも向く。「投機筋が市場で賭け事をやっているのが問題だ」

オバマ大統領は、ウォール・ストリートはじめ、大金を動かす連中には、つねに手厳しい。自由を与えすぎた結果、強靭な生命力をもつ雑草だけが伸びすぎてしまったようだ。可憐な弱き良草たちに陽の光は届くのか?

posted by 四代目 at 07:43| Comment(0) | 石油 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月27日

原油価格高騰は誰のせいだ?それは中国だ。Financial Times



ここ数ヶ月の原油価格の高騰の原因は
「中国である」とフィナンシャル・タイムズは断言する。

先進諸国の石油需要は減少傾向にあるが、
発展途上国の石油需要は、2008年以降、11%増加した。
そして、その「増加分のほぼ半分を中国が占めた」

中国経済の規模は、アメリカの半分以下であるのに、
「すでにアメリカより多くのエネルギーを使っている」

中国国内でも原油価格の高騰は問題であり、
トラック運転手たちが上海港を封鎖する抗議行動もおきた。
それでも、中国はその不満を力で押さえつけることができる。

ところが、民主国家アメリカではそうはいかない。
雇用統計が、ここ数年で「指折りの良好な内容」だったのに拘わらず、
オバマ大統領の支持率は過去最低を記録した。

アメリカのガソリン価格の高騰が、
オバマ大統領の支持率を蝕んでいるのだ。

さらに「共和党は嬉々としてガソリン価格の高騰の責任を
オバマ大統領個人に負わせるために様々な策を講じている」という。

日本も安穏とばかりはしていられない。
円高局面が一転してしまえば、
原油価格高騰の波は、大津波を越えかねない。

posted by 四代目 at 07:08| Comment(0) | 石油 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月26日

脱石油からはじまった原子力の頓挫。先の見えない日本のエネルギー供給。



日本は言わずと知れたエネルギー輸入国。
では、エネルギーにどれほどのお金を支払っているのか?

2008年、年間エネルギー支出は28兆円である。
これは、当時の国家予算84兆円の3分の1を占める。

近年の日本の国家予算の半分くらいは赤字国債であり、
税収は予算の半分くらいしかない。
つまり、国民の税金の半分以上を使って
エネルギー(石炭・石油・LNG)を買っていることになる。
とんでもない出費である。

これほどエネルギー支出が増えたのは、ここ数年である。
1995年には5兆円程度と、2008年の5分の1以下だったのだ。

2008年はリーマンショックもあり、
原油価格が以上に高騰したわけだが、
最近の原油価格の上昇は、2008年を再び目指している。

アメリカの量的緩和(ドルの大量ばら撒き)によって、
世界規模のインフレが起きており、
食糧・エネルギーの価格高騰は、収まる気配はない。

1970年代、2度のオイルショックを経験した日本は、
「脱石油」を掲げ、「原子力」の普及拡大を官民一体となって取り組んだ。

その甲斐あって、
2008年の原子力発電規模は4万8000MW。
ぐんと原子力のエネルギー供給は増加。

そして、この方針を推し進めるべく、
少なくとも14基の原発の新設を計画していた。

ここに福島第一原発の放射能事故である。
それらの計画は、まさかの頓挫。
「新たな原発の建設はまず不可能」となった。

エネルギー輸入大国の日本にとって、
これ以上、外国からエネルギーを買う姿勢は危険極まる。

今後、新興国の人口増加・経済発展によって、
世界のエネルギー需要は急増すると予想されている。
つまり、今後ともエネルギー価格には上昇圧力がかかり続ける。

日本のエネルギー戦略の選べる道は、
かなり狭いものとなってしまっているようだ。
いやがおうにも、クリーンエネルギーに期待がかかる。

posted by 四代目 at 16:10| Comment(0) | 石油 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トラックストが全土に飛び火せぬよう、火消しに必死の中国政府 Financial Times



昨年中国でおきた「工場スト」と、
先週始まった「トラック運転手スト」は、
本質的な違いがあるという。

「工場スト」は、その矛先を
「ホンダをはじめとする日系自動車メーカー」に
向けることで終息した。

しかし、今回の「トラック運転手スト」は、
その陰に「インフレ」が潜んでいるため、
この混乱は局所的なものから、中国全土に飛び火する可能性がある。

温家宝首相いはく、
インフレは「一度解き放つと
オリに戻すのが極めて困難なトラ」である。

「先月のインフレ率は前年比5.4%という
32ヶ月ぶりの高水準」であった。
政府の対策は全く効を奏していない。

現在の中国国内のディーゼル燃料の価格は、
いまだ1リットル1.05ドルであり、
この数字は、「国際市場価格を35.1%下回っている。」

燃料価格は政府が決めているので、
国際価格よりも下回っているということは、
その差が国の負担になっているということだ。

このまま国際原油価格が高騰を続ければ、
中国政府の燃料負担額は、ケタ違いに膨れ上がる。

そうなれば、国内の燃料価格を引き上げざるをえず、
「トラック運転手スト」が全土に広がる危険も増える。

統制された経済が、どこまで機能するのか?
中国は面白い実験場となっている。

中国政府は、今回の「トラック運転手スト」が
「他の地域に広まらないように
メディアの報道を厳しく規制している」そうだ。
posted by 四代目 at 12:02| Comment(0) | 石油 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月18日

石器時代は石がなくなったから終わったのではない。石油時代は‥‥

福島第一原発により、東京の飲料水が汚染された。
人々は極度に恐れ、日本国内からミネラルウォーターが消え去り、
日本コカ・コーラ社は急遽、
お隣韓国からミネラルウォーターを輸入する事態に。

しかし、その汚染の度合いは軽微で、
一週間もたたずして、汚染物質は検出されなくなった。

「水」こそは生命の源であり、
その安全性が脅かされることに、
人間は本能的な恐怖を感じる。

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大自然のイメージが色濃いカナダ。
そこに流れる大河こそ、万物を育む生命の宝庫であろう。

ところが、そのカナダの大河の水を飲み、
異常な確率で「ガン」が発生している地域がある。
カナダ・アルバータ州だ。

なぜ?放射能?
いや、全然違う。
もっともっと古典的な汚染だ。

石油採掘からでた汚染水に、
ヒ素、鉛などの有害物質が
たんまりと含まれていたのだ。

その汚染水は、貯蔵庫と呼ばれる池に蓄えられているが、
その池の底からは、悠々と有害物質が大河に注ぎ込んでいるという。
何と、その汚染廃液の池は宇宙から見えるほど巨大だというのだ。

こんな状態が10年以上続いている。
そして、この状態のまま石油採掘は続いている。

その開発規模はケタ違いに巨大で、
ギリシャ一国ほどの大きさだという。
それでもまだ2〜3%しか開発していないのだそうだ。

この開発がこのまま続けば、
汚染の被害は単純に30〜50倍規模になる。

kanada1.jpg

これはアフリカの途上国の話ではないのである。
G7と呼ばれる、先進国カナダの話なのである。

ここの石油採掘は、
従来のものとは全く異なり、
油分を多量に含んだ土壌から、石油を取り出す。
「タールサンド」と呼ばれるものだ。

20世紀は石油の時代であった。
しかし、21世紀がそうなるとは限らない。
石油の限界が見えてきたからだ。

石油の需要は年々2%づつ上昇しているにもかかわらず、
その埋蔵量は年々7%づつ低下している。
つまり、石油の取り崩しが始まっているのだ。

地球上探しても、なかなか石油は見つからない。
3ヶ月しか氷が溶けない北極圏や、
海底1,500mの深海など、危険を冒して石油を掘っている状態だ。
そうして、英BPはメキシコ湾で痛恨のミスを犯した。

そんな危険を冒すなら、
住民にガンが発生しようが、それは力で押さえつけて、
カナダの「タールサンド」から石油をとろう。
そんな酷い話なのである。

10年以上前から、カナダの原住民は、
「タールサンド」に抗議の声をあげ続けていた。
しかし、その声を聞いてくれる人はいなかった。

「タールサンド」の開発業者は、
「有害物質は自然から流れ出たものだ」と言い張った。
民間の研究者のデータなど、鼻から相手にしない。
カナダ政府の調査機関を篭絡済みだからだ。

カナダの原住民たちは、国内での抗議活動に限界を感じ、
環境会議が開催されるコペンハーゲンへと向かう。

ところが、ここでも全く相手にされない。
会議場には入れてもらえず、
扉の向こうでは、各国で無意味な合意がなされるだけだった。

それもそのはず、
カナダの「タールサンド」のお得意先は、
世界最大のアメリカ合衆国だからだ。

kanada2.jpg

「タールサンド」に完全に依存するアメリカにとって、
この開発は、経済の生命線なのである。
アメリカが態度を変えない限り、カナダは俄然強気なのだ。

途方にくれるカナダの原住民たち。
しかし、小さいながらも火種を絶やさなかったことが功を奏す。
この火種が、思わぬ著名人に飛び火したのだ。

映画監督、ジェームズ・キャメロンの登場である。
「アバター」の物語は、タールサンドに着想を得たとさえ言われる。

kanada3.jpg

ジェームズ・キャメロンが味方につき、
この問題は、燎原の火の如く世界に広がった。

そうなると政治家は弱い。
もともと政治家は大勢につく習性があるからだ。

カナダ政府は「タールサンド」の調査は
今まで不十分だったことを認めた。
カナダの原住民たちの活動が、
一歩踏み出すことに成功した瞬間だった。

「石器時代が終わったのは
石がなくなったからではない」

石油の時代は、
石油を使い切るから終わるわけではない。


出典:NHKBS世界のドキュメンタリー
シリーズ 未来をあきらめない
 「岐路に立つタールサンド開発〜カナダ 広がる環境汚染」(後編)

posted by 四代目 at 15:05| Comment(0) | 石油 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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