2016年11月23日

銃が「時代おくれ」となるまで[アメリカ]



"All of that suddenly changed on February 23,1997"

「1997年2月23日、突然すべてが変わってしまった」とダン・グロス(Dan Gross)は言う。

"My little brother Matt was shot in the head."

「弟のマットが、銃で頭を撃たれたんです」



幸い、一命はとりとめた。

しかしアメリカでは、毎日90人もの人々が銃で命を失っている。

"loved ones, brothers, sisters, sons, daughters, parents..."


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国内におよそ3億丁あるというアメリカの銃。

Keep our families safe
「家族の安全を守る」

という思いが、その根底にある。



「かつてアメリカがフロンティアの時代、田舎の村には警察とかいなかったので、村は村で『自分たちの身は自分たちで守る』必要があったんです」

アメリカで暮らす伊藤穣一は言う。

「日本ではテレビや映画でしか見ない銃も、アメリカでは『生活の一部』なんです。ぼくも何度か、銃のトレーニング学校に通いました。先生は『とにかく必ず銃をもって歩け』と言ってました。『トレーニングを受けたあなたが銃をもっていることによって、アメリカはより安全になる』と言うのです。いわば『社会の責任』として銃をもっている人たちもたくさんいるんです」


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The younger, the better
「若ければ若いほどいい」

銃のトレーニングは、若いときからはじめるほど良いのだと教える先生もいる。



A gun makes your home safe
「銃が家庭を安全にする」

そう信じるアメリカ人の割合は、10年前の42%から63%にまで増加している。その背景には、アメリカで多発する銃乱射事件などが深く影響している。


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しかしアメリカでは毎日、銃による犠牲者が90人もでている。

その10%は、不幸にも子供たちである。

毎日9人の子供たちが銃撃に巻き込まれている。年間では900人もの子供や若者たちが自らの命を銃で絶っている。



さらに不幸なことに、

"They're almost all with a parent's gun."

子供たちは、親の銃で命を落としている。



「銃が家族を守る」と信じて疑わないアメリカ国民。

だが皮肉にも、その銃こそが、多くの家族の命を奪っているという現実がある。


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さすがに、もうたくさんだ。

"Enough!"

「銃乱射事件は、もうたくさんだ(Enough)。銃の暴力におびえる毎日は、もうたくさんだ(Enough)。銃をもつべきでない人たちが銃をもつのは、もうたくさんだ(Enough)!」



兇悪な銃犯罪がおきるたび、アメリカ人は声をあげてきた。

Enough!

今度こそ、銃を規制しよう、と。



だが、銃規制をはばむ力は根強い。

「銃なしで、どうやって自分の身を守るんだ?」

フロンティア時代につくられた合衆国憲法は、こう謳っている。

A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.

規律ある民兵団は、自由な国家の安全にとって必要であるから、国民が武器を保有し携行する権利は、侵してはならない(1791年成立『アメリカ合衆国憲法、修正第2条』)。

200年以上前の、この文言こそが国民の武装する権利を保障している。


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「1年くらい前、『近くで銃撃があった』というアラート・メールが来ました」

スプツニ子は言う。

「銃をもった相手に対面したら、普通なら逃げるとか、静かにしているイメージなんですが、そのメールには『即席の武器をつかって応戦せよ』と書いてあったんです」



銃乱射事件がおきるたびに、その直後、銃は売れ行きは爆発的にのびる。

銃関連のニュースを見たあと、24時間放送の銃専門チャンネルに切り替えて、リビングにいながら簡単に銃を注文できる。もちろん、インターネットでの売買はもっと盛んだ。また、ガン・ショーと呼ばれる銃の展示即売会は、全米各地で年に5,000回以上も開催されている。

つまり、アメリカにいれば、いつでもどこでも銃を買い求められるのである。



誰でも買えるのか?

いや、ブレイディ法という法律によって、銃を買うときには身元調査(background check)が義務付けられている。この法律は1981年、時の大統領ロナルド・レーガンが銃で狙われたとき、銃弾をうけて半身不随になった議員、ジェイムズ・ブレイディ報道官が成立にこぎつけたものだ。


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「しかし現在、この身元調査はインターネットの個人売買や、展示即売会には適用されません」

すなわち、誰でも買える、ということだ。



銃規制の強化をもとめる団体「Brady Campaign」の代表、ダン・グロスは言う。

"There shouldn't be thousands of gun sales every day at guns show or online without Brady background checks."

「ブレイディ法による身元調査をせず、毎日、展示会やネットで何千もの銃を販売すべきではありません」


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"90% of Americans support expanding Brady background checks to all gun sales."

「アメリカ人の90%が、すべての銃器販売に対するブレイディ法の実施を支持しています」

"Only 6% of the American public disagrees. That's about the percentage of the American public that believes the moon landing was a fake."

「反対しているのは6%のみ。この数字は『月面着陸は捏造だ』と信じるアメリカ人の割合とほぼ同じです」


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では、しぶこく反対しているのは誰なんだ?

"The corporate gun lobby has spent billions of dollars."

「企業による銃規制反対のロビー活動には、何十億ドルもの大金がつかわれています」とダン・グロスは言う。

"They're desperate to hide the truth, because they view the truth as a threat to their bottom line."

「彼らは、必死で事実を隠しています。なぜなら、事実が彼らの利益をおびやかすからなのです」

"If you tell a big enough lie enough times, eventually that lie becomes the truth."

「まったくの嘘でも、十分な数を繰り返すと、現実になりますからね」


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過去10年間は、そうした銃規制に反対するロビー活動(政治的はたらきかけ)が功を奏してきた。しかし今や…、

"The stranglehold of the gun lobby is clearly being broken."

「銃ロビー活動の支配は、明らかに壊れかけています」とダンは続ける。

"Some candidates are being forced to reverse very bad positions they defended very comfortably, until very recently. It's almost surreal to watch."

「ほんの最近で銃規制に反対していたにも関わらず、その主張をくつがえさなければならない候補者もでてきているのです。それは私たちにとって信じがたいことでした」



ダンは声を強める。

"We're on offense."

「今度は私たちが攻撃する番なのです」

"We're flipping that narrative on its head."

「私たちは数で逆転しているのです」

"We are so clearly at a tipping point."

「私たちは明らかに、転換点にいるのです」



そして、オバマ大統領による歴史的な発令をみた。

"Anybody in the business of selling firearms must... conduct background checks."

ブレイディ法による身元調査を、いままでには対象とされてこなかった、何千もの銃販売窓口に拡大させる、というのである。


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ある日、飛行機に乗っていたダン・グロスは、ぼんやりと隣の人が見ているテレビドラマを眺めていた。

それは「Mad Men」というドラマで、1960年代を描いたものだった。

"I'd seen somebody smoking in an office or around children or while pregnant or drinking and driving or driving without seat belts or sexually harassing a coworker."

画面のなかには、タバコを吸っているシーンがたくさんあった。オフィスの中でも、子供や妊婦の近くでも、平気でタバコが吸われていた。

さらに飲酒運転やシートベルトなしでの運転も、普通におこなわれていた。







ダンは言う。

"Think about how much the world has changed in a relatively short period of time."

「考えて見てください。いかに短い時間で世界が変化したかを」

"how all those behaviors that were once considered commonplace or normal have become stigmatized in just a generation or two."

「たった一世代か二世代のうちに、それまで当たり前とされてきたことが、非難されるべきものへと変わってしまったのです」



確かに、ドラマの喫煙シーンは、かつての主人公を魅力的にみせている。しかし、現在の常識では、もはやあり得ない。酒飲み運転もそうだ。

ダンはつづける。

"Maybe someday, some period TV show will depict the terrible nightmare of gun violence, and a future generation of children might only be able to imagine how terrible it must have been."

「きっといつか、暴力的な銃による悪夢をえがく時代ドラマがつくられ、将来の子供たちはその悲惨さを想像もできなくなるでしょう」

"That's my dream. Thank you."

「それが私の夢です。ありがとう」











(了)






出典:NHKスーパープレゼンテーション
Why gun violence can't be our new normal
銃暴力が”普通のこと”になってはいけない理由
Dan Gross
ダン・グロス



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posted by 四代目 at 08:29| Comment(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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