2014年11月16日

どこかへ行かねばならない日本企業 [The Economist]




日本マネーが海外への流出をつづけている。

The Economist「日本企業は国内での投資をけちっている(Japanese firms have skimped on investment at home)」



国内で消費されない日本円はどこへ行くのか?

それは今、「東南アジア」だ、とエコノミスト誌は言う。

The Economist「東南アジア地域への日本の投資は、昨年、2兆3,000億円に倍増した。ソフトバンクはインドネシアの企業、トコペディアに対する1億円の投資を率いた。東芝は5年間で10億ドルを東南アジアへ投資すると約束した」






○中国から東南アジアへ



かつて、そうした資金は中国へと向かったものだった。中国の巨大で安価な労働力(China’s vast, cheap labour force)がそうさせていたのである。

The Economist「だが今や、中国で人件費が着実に上昇し、日中間の政治的緊張(political tensions)がつづく中で、東南アジアがふたたび魅力的に見えるようになった。昨年、日本企業は東南アジアに3倍近い規模の投資を行った。一方で、日本の対中投資は4割近く落ち込んだ」

こうした東南アジアに対する熱狂は、1980〜90年代以来のことである。その頃が日本による東南アジア投資の第一波であり、タイ、マレーシア、シンガポールなどに、各国の自動車・電機産業(automotive and electronics sectors)が築かれた。しかしそれは、1997〜1998年のアジア金融危機(Asian financial crisis)に遭って、おおむねストップしてしまっていた。






○国内に向かない投資



日銀は2013年、アベノミクスの一環として「新たに印刷したマネーで債券の購入をはじめた(いわゆる量的緩和、quantitative easing)」。

しかし国内での借り入れ需要が依然低迷しているため、国内各行は手元に残った多額の現金のうち、15%を超過準備として日銀に預けざるを得なかった(その利子がたとえ微々たるものだとしても)。



そして一方で、過剰資金は東南アジアを中心とするアジアへと流れた。

The Economist「邦銀のアジア向け融資は、2012年末以降、急速に増加し、6月時点で4,650億ドル(約54兆円)に達した。三菱UFJフィナンシャルグループは、タイのアユタヤ銀行の株式の72%を5,360億円で取得した」

結局、アベノミクスの期待した「国内企業による国内投資」は、思うようには伸びていない。日本の国内市場は急速に高齢化、そして確実に縮小しており、工場の新設などがためらわれているのである。



国内投資が鈍るなか、カメラメーカーのキャノンは「日本国内での生産比率を高める」ことを明らかにしている。

しかしこれは一般的な例ではない。

The Economist「インドネシアに新工場を建設している三菱自動車のような、反対の事例(counter-examples)が複数存在する」






○輸出品から現地生産品へ



紙幣増刷(量的緩和)もあって、日本円は安くなった。

しかし予期された輸出品の伸びはみられていない。

The Economist「ドイツ銀行の試算によると、日本からの輸出品に代わる”現地生産品”が対外投資によって提供されたことで、日本の貿易収支を16兆円減らしたという(2012)。これは、7兆円という同年の日本の貿易赤字を上回る額だ」



というのも現在、日本国内でつくって輸出するよりも、現地で生産販売したほうが高いリターンを得られるのである。これは皮肉にも、コーポレート・ガバナンス(企業統治)が改善した結果であるという。

「コーポレートガバナンスが改善したおかげで、日本企業は以前よりも利益を重視するようになった(Japanese firms focus more on profits)」と、ロバール・フェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFG証券)は指摘する。



The Economist「海外事業(overseas ventures)が加速するにしたがい、日本はより頻繁に貿易赤字(trade deficit)に陥るようなった」






○不労所得



日本企業は229兆円という巨額の現預金を貯め込んでいるという。しかし、それは国内へと還流しないために、日本人の賃金上昇という結果を生んでいない。

脆弱な国内経済が、日本企業を海外での拡大へと駆り立ててしまうのだ。



今年、カンボジアに同国最大となるショッピングセンター、イオンモールが開店した。

プノンペンでのその記念式典に、一国の首相が立ち会った。これは異例のことだったが、「それが日本投資の象徴(a symbol of Japanese investment)だ」とエコノミスト誌はいう。というのも、スケートリンクからテレビ局まで備えるその複合施設は、日本企業が建設したものだったからだ。

The Economist「東南アジア各国の政府が、日本企業に秋波を送っている。そして、大量の日本円が東南アジアに押し寄せている」



「このままでは、日本が”レンティア経済(rentier economy)”に陥りかねない」と、マルティン・シュルツ氏(富士通総研)は懸念する。

それは、国内での経済活動が振るわぬ結果、海外資産の「レント(不労所得)」で生きていくことを意味する。これは”持てる者”にとっては朗報であろう。しかし”持たざる者”にとっては辛いことだ。



The Economist「プノンペンの郊外には、携帯電話向けの小さいモーターを製造するミネベアや、調味料メーカーの味の素をはじめとする、日本メーカーを誘致するための新しい工業団地(industrial park)がある。団地には新たなテナントが引きも切らない」

その団地の総責任者、植松浩氏は言う。

「民間企業は、どこかへ行かなければならない…」













(了)






出典:
『The Economist』Nov 1st 2014「Japanese investment in South-East Asia: Outward bound」
JBpress「東南アジアへの投資:日本マネーが大量流出」



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posted by 四代目 at 08:53| Comment(0) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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