2014年11月14日

変わりゆく「性」のかたち [The Economist]



いまから60年ほど前、イギリスの内務大臣は「同性愛を撲滅する(eradicate)」と誓った。

大臣の命をうけた覆面捜査員は、その手のバーを巡回し、同性愛者をワナにかけては刑務所に送り込んだ。



これはイギリスだけに限ったことではない。

1950年代当時、同性間の性交渉は「ほぼ全世界的に法的で禁じられていた(gay sex was illegal nearly everywhere)」。



中国では1980年代、同性愛者が一斉に検挙され、裁判もないままに収容所送りとなり、強制労働を課せられた。

The Economist「世界中の同性愛者が、恐怖の中でひっそりと暮らしていた(All around the world, gay people lived furtively and in fear)」



ところが現在、

The Economist「多くの国で起きている同性愛(homosexuality)に対する姿勢の変化は、世界の驚異(the wonder of the world)の一つに数えられている」

アメリカ人の75%が、友人や同僚に同性愛者がいると答えている(1985年、この割合はわずか24%だった)。アメリカ国民の大半はすでに「同性同士で結婚できる州(states where gays can wed)」で暮している。2014年10月6日、アメリカの最高裁判所は、同性婚容認を不服とする上告を受理しないことを決定した。






○好意



The Economist「現在、少なくとも113の国で、同性間の性交渉が合法化されている(Today gay sex is legal in at least 113)」

合法違法を問わず、先進国ではもはや「同性愛者を嫌悪することは、社会的に受け入れられない(It is no longer socially acceptable to be homophobic)」。



中南米は同性愛に好意的(gay-friendly)である。

The Economist「アルゼンチンでは74%、ブラジルでは60%の人が、社会は同性愛を受け入れるべきだ(society should accept homosexuality)と考えている」



好意的な傾向は若者たちが主導する(lead the way)。

The Economist「韓国では、同性愛を受け入れるべきだと考えている人は、50歳以上ではわずか16%だが、18〜29歳では71%に上る」

タイでは、欧米諸国よりもトランスジェンダーには寛容である。






○悪意



一方、同性愛者が安全ではない国もある。

The Economist「同性愛者が死刑(execution)の対象になる国が、今でも5つある。イランでは絞首刑(hangs them)、サウジアラビアでは石打刑(stones them)だ。世界78カ国で同性同士の性交渉が、法律で禁じられている」

アフリカ大陸やイスラム圏では、法律の有無にかかわらず、民間による「むち打ちや殺人(beatings and murders)」が行われている。レズビアンを矯正するという名目で「レイプ(corrective rape)」も横行する。



国家による法規制も着々とすすむ。

The Economist「チャドでは同性間の性行為(gay sex)を法で禁じようとしている。ナイジェリアとウガンダでは、極めて厳しい反同性愛法(draconian anti-gay laws)が成立した。ロシアは同性愛の助長(promotion)を禁じている」



ロシアのプーチン大統領は、同性愛の世界的な広がりを「背徳の拡散(to spread perversion)」と嫌悪し、それを欧米による策略だと吹聴している。

The Economist「同性愛に反対する人の割合は、ロシアでは74%、ナイジェリアでは98%に上る。インドネシア、セネガル、ウガンダ、マレーシアといった国では、若者も高齢者に劣らず不寛容だ」



The Economist「同性愛者に対する憎悪(Revulsion against homosexuals)は、古くからある根深いもので、それなりに正直な感情(sincere)だ」

宗教力の強い国ほど、その傾向にある。

The Economist「宗教心の強い社会ほど、同性愛者の権利に後ろ向きだ(the more pious a society, the less enthusiastic it is about gay right)」






○都市と農村



南アフリカの憲法は「極めて親同性愛的(pro-gay)」である。

しかし農村では、同性愛をおおぴっらにすれば殺されかねない。



都市部においては、誰もが自分を知っている村よりも匿名性が高い。

The Economist「インドの同性愛者の人生は、地方ではいまだに辛いもの(still awful)だが、都市部のムンバイやデリーでは、同性愛が違法であってもずっと容易(much easier)だ」

中国では違法ではない。それでも地方でははばかられる。だが、「都市部では隠されなくなっている(undisguised)」。



都市化(urbanisation)は同性愛にとって、明らかな追い風だ。

The Economist「人々が都市へ移るにつれて、古い慣習(old traditions)が力を失っている。2050年までに都市部に住む人の割合は、現在の54%から66%にまで上昇すると見込まれている」






○自分への真実



「トースターに触れたいと思うくらいにしか、女性に触れたいと思わない(could no more imagine longing to touch a woman than longing to touch toaster)」

1970年代に、そう思っていた10代の若者がアメリカにいた。



だが彼は「正常(normal)」でありたいと切望し、25歳になるまで「自分に対する真実(truth to himself)」を否定し続けていた。

そういう時代だったのだ。



The Economist「だが今、彼は愛する男性と結婚している。2人が暮らすバージニア州のでは、それを奇異なことだと考える人はほとんどいない(few think this odd)」













(了)






出典:
『The Economist』October 11th 2014「Human rights: The gay divide」
JBpress「人権:同性愛の権利をめぐる国際格差」



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posted by 四代目 at 09:47| Comment(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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