2013年08月29日

謎のビッグフット、そして「敬意」



アメリカ19世紀半ば
西部開拓の時代

ゴールドを求めて西海岸に押し寄せた人々は、ロッキー山脈の深い森のなかで「それ」と遭遇した。



現地の先住民によれば、その生物は森の奥深くに棲み、シャケをとって食べ、夜中に人をさらう。

ある部族はそれを「サスカッチ」と呼んだ。「毛むくじゃらの巨人」という意味だ。その体長は、ヒトをはるかに見下ろす2〜3m。全身が剛毛で覆われ、人間のように二足歩行をするという。



「山小屋で、サスカッチに襲われたんだ…!」

そんな証言が、金の採掘のために山に入った入植者たちの間から聞かれた。

だが、その姿をハッキリとらえた写真などはなかった、1967年までは。






■疑惑の映像



1967年10月、謎の巨人「サスカッチ」の映像に、世界は衝撃を受けた。

カリフォルニア州の森の中、開けた川原を悠々と歩く姿が撮影されたのだ。途中、獣人はカメラに気が付いたのか、一瞬こちらを振り向いている。








この謎の獣人を、人は「ビッグフット」と呼ぶようになっていた。

ヒマラヤ山脈のイエティ(雪男)、中国の野人、オーストラリアのヨーウィ、日本のヒバゴンなどなど、世界各地では「人に似た獣人」の目撃は相次いでいる。

ビッグフットは、北アメリカ大陸のロッキー山脈を根城としているようだった。



ビッグフットを初めてカメラでとらえたのは、元カウボーイの「ロジャー・パターソン」。彼は相棒のボブ・ギムリンと森でキャンプを張りながら、ビッグフットを待ち構えていたのだった。

この映像は、のちに「パターソン・フィルム(Patterson Film)」と呼ばれるようになり、今なお世界中で再生され続けている。



しかし、それを疑う声も高い。

「『着ぐるみ』を着たイタズラだろう」

フィルムの撮影された1967年当時、映画界では「猿の惑星」が撮影されており(1968年公開)、そのスタッフがビッグフットの映像と関わったというウワサも流れた。










■着ぐるみ



「『猿の惑星』が撮られた当時の技術では、あの映像はつくれないと私は思います」

そう言うのは、長らくハリウッドで特殊メイクの専門家として働いていた「ビル・マンズ」。

「毛皮を植え付ける『伸び縮みする素材』がまだなかったからです。伸縮素材が出回りはじめたのは1984年ですから」

ビッグフットと思しき生物は、映像の中で腕を振りながら歩き、振り返るなどの大きな動きを行っている。それでもその毛皮は完璧に身体にフィットしている。そうした「たるみ」や「もたつき」を出さない素材は、当時まだなかった伸縮素材を使う方法しか思い浮かばない、とビルは言う。



また、ビッグフットが「小顔」であることも、ビルにとっては不自然に思われた。着ぐるみでゴリラのような顔をつくる場合、それは人がかぶるために一回り大きくならざるを得ない。

「ビッグフットの頭はバランスが良くて、とても小さいんです」

さらに、首回りに「毛羽立ち」が全く見られない点も、技術者としては解せぬことだった。着ぐるみの頭は取り外せるように作るのが鉄則で、そのため首回りには繋ぎ目ができるため、その周辺の毛はちょっとした動きですぐに毛羽立ってしまうのだ。

「着ぐるみの撮影中は、首回りが毛羽立つたびにカメラを止めて、我々が毛をとかして馴染ませねばなりません。ですがビッグフットは、こちらに振り返るような大きな動きの後でさえ、首の後ろがきれいなままです。私の経験上、もし着ぐるみであれば、こんなきれいな状態が続くことはありません」



最後に、彼はこう言って首をかしげた。

「謎なのは、これがビッグフットだともも考えにくいし、逆に着ぐるみだと考えるのも難しいということなんです。なぜなら、着ぐるみであれば当然起きることが起きないんですから。もしあれが着ぐるみだとしたら、今までで最もすごい着ぐるみであることは確かだと思います」










■現在の森



パターソン・フィルムが撮影された場所は、ほぼ特定されている。

現在ビッグフットの聖地となっている町「ウィロウ・クリーク」から、およそ40km離れた「ブラフクリーク」という森の中だ。

今は道の通っているこの森も、問題の映像が撮影された当時はまだ道路もなく、パターソンとギムリンは道なき道を深く深く進んで行ったのだという。今でも、現場に近づくには徒歩で谷を下り、さらに5kmほど森の奥深くに分け入っていかなければならない。



「爪痕だ。これはクマだね」

撮影現場を10年かけて追求した地元の研究者らは、森の木に残されたクマの痕跡を指差す。

「クマの糞もたくさんあるよ。まるでクマがキャンプをしていたみたいに」

この一帯は「アメリカ・クロクマ」の生息地。その体長は2m近くあり、その姿をビッグフットと見間違えるケースも多いといわれている。



パターソン・フィルムが撮影されてからは、およそ50年近い月日が流れている。その間、森の様子もすっかり様変わりしてしまった。樹木は大きく成長し、川筋も洪水などを経て地形が変わってしまっている。

それでも、映像に残された「恐竜クラスの巨木」などは、そのままにあった。

「パターソンは、ここで有名なビッグフットが振り返るシーンを撮ったんです。その時ビッグフットはあそこで振り返ったんです」



いまだ人跡のほとんどない鬱蒼とした森の中、撮影場所を特定した研究者は、最後にしみじみとこう言った。

「もし、パターソンたちがでっち上げの映像を作るつもりなら、重いサルの着ぐるみを持って、わざわざこんなに大変な森の奥まで来る必要はありません。もっと手近に撮影しやすい森はあったはずです」










■足跡



もし、未知の生物を自然界に探る時、その証拠となるものを「フィールド・サイン」と呼ぶ。

たとえば、爪痕や足跡、食べ跡や排泄物、その巣など「生きている証」があって初めて、その生物の実在が認められる。

ビッグフットについても、毛や糞などを見つけたという人がいる。その組織をDNA鑑定したという研究者もいる。だが現在、最も信ぴょう性が高いとされているビッグフットのフィールド・サインは、その「足跡」だ。



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足のサイズは40cm強、幅は20cmもある。その名前の由来ともなった、まさに「ビッグ・フット(大きな足)」である。

人間のプロレスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントの足のサイズも38cmと巨大だが、それと比べると、ビッグフットの足跡はその足幅が断然広い。



だが、映像同様、その足跡に関しても「偽造」の疑いは付いて回る。

カリフォルニアの森に住むアメリカ・クロクマは、その姿もだが、足跡もビッグフットに間違われやすい。しかし、決定的な違いがある。クマの足は親指が一番小さく、小指が一番大きい。つまり、左右が逆に見えるのである。



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ゴリラの足跡はどうか?

じつは、ビッグフットの足跡には「中折れ現象」と呼ばれるゴリラの足跡と似た形跡が残っている。中折れ現象というのは、足が地面を蹴り出す時に、足の真ん中付近がグニャリと曲がる現象だ。

「ビッグフットの足跡の中には、このように真ん中に圧力がかかって凹んだ部分があります。これは中折れ現象が起きているんです」と、人類学者のジェフ・メルドラム博士(アイダホ州立大学)は言う。彼は人や猿の歩き方を研究している人物だ。



bigfoot3.jpg




木の上で暮らすゴリラは、足でも手のように枝をつかめるように、その構造は人間以上に柔らかくできている。そのため歩く時にも、真ん中あたりから2つに折れるように足の関節ができている。

一方、人間の足裏にはアーチ状になった土踏まずがあり、ゴリラのような中折れが起きないような骨格になっている。それは、長時間安定して歩くために進化したからである。

つまり、中折れが起きる足というのは、地面を歩くというより、木の上で生活しやすい足なのである。



では、中折れ現象の起こるビッグフットの足は、樹上生活に適したものなのか?

いや、その指の並びは地面を歩きやすいように、人間と同じく5本の指が一列に並んでいる。それに対してゴリラの足指は、まさに手のように親指だけが離れているのである。

「もしかすると、これは二足歩行が独自に進化したケースなのかもしれません」とメルドラム博士は言う。「二足歩行をしながらも、非常に急勾配の山で、地面を指先でしっかり掴みながら移動するための適応だと考えます」






■グレート・エイプス



われわれヒトを含む霊長類の進化は、およそ8,000万年前にはじまったと言われている。ゴリラやチンパンジーはそうした流れから分岐したと考えられている。

その系統図には、現在にまで生き残っている種もあれば、すでに絶滅してしまった種もある。



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たとえば、今はもういない「ギガントピテクス」という巨大な類人猿は、800万年前に南アジアあたりで発生したと考えられている。発見された化石は下アゴと歯のみだが、そこから推定される体長は3m、体重は500kg。史上最大の類人猿である。

また、二足歩行をしていたことが判っている「パラントロプス」という霊長類は、200万年前のアフリカに発生した初期の人類の一種である。



そうした絶滅種の「まさかの生き残り」が、ビッグフットやイエティなど獣人伝説の元となっているのだろうか?

そう考えようとした時に疑問視されるのは、霊長類という種が基本的に「寒さに弱い」ということである。

「アジアの化石類人猿というのは、生息していた地域はもっぱら熱帯・亜熱帯で、樹木が少ない温帯には分布をしていません。化石類人猿の北限は現在の北緯約30度、それより北では化石類人猿もまったく発見されておりません」と、中務真人教授(京都大学)は言う。

とくにアメリカ大陸という大地は、アフリカで発生されたとされるヒトにとっても最も遠くの僻地であり、最も最後に到達した場所であると考えられている。ヒトという種は、その知恵を用いて寒さを何とかかんとか克服して、ロシアを経て北からアメリカ大陸に入ったと定説は言う。



もしアフリカ大陸から大西洋を渡れば、すぐに南アメリカ大陸に到達できる。だが、身体の大きな霊長類ほどそれは難しいと中務教授は言う。

「現在、南アメリカ大陸に住んでいる霊長類は、もともとアフリカに住んでいた霊長類が約4000万年前に大西洋を漂流して漂着した子孫だというふうに考えられていますが、漂流していた霊長類はおそらく比較的軽い身体の小さな猿だったと考えられています。大型の霊長類が大西洋を漂流して無事漂着する可能性は、皆無だと思います」



類人猿学者の島泰三氏は、こう言う。

「まずアメリカだというのが、私は非常にひっかかったことです。すべての大型類人猿というのは、ゴリラ、オラウータン、チンパンジーですが、このグレート・エイプス(Great Apes)たちっていうのは熱帯地域に住んでいるんです。ところがアメリカでビッグフットが見つかったっていうのは、温帯地域、あるいは少し山際で寒帯に近いようなそういうところ。ですから、今までのグレート・エイプスが住んでいることろとは全く違う」






■敬意



学術的にはあり得ない存在の「ビッグフット」らの獣人。

それでも今なお、その目撃情報はアメリカのニュースを騒がせる。これまでの目撃情報は全米で3,800件以上(足跡200個以上)。昨年(2012)冬にも、アメリカのABCニュースは最新映像を報道。謎の黒い影は、腕を振りながら二本足で歩いているように見えた。

謎に満ちた不思議な森の住人は、世界一の先進国であるはずのアメリカで、その息吹を確かに感じさせるのである。



アメリカ大陸の先住民たちの間では、そうした存在は脈々と語り継がれている。

「彼らは、われわれ人がこの大地に生まれるよりずっとずっと前からこの地にいた。彼らが兄で、人は弟のようなもの。

 人は愚かで自分勝手で、母なる大地を傷つけることも彼らはお見通しだ。だから彼らは、人に近づこうとしない。

 人から姿を隠し、興味が湧いたときだけ、その姿を現すのだ(北米先住民の伝説)」



日本では、「ヒバゴン」と呼ばれる真っ黒の剛毛で覆われたギョロ目の怪物が、広島県の比婆山で目撃された事件があった。

土地の伝説によれば、ヒバゴンは「天之御中主(あめのみなかぬし)」の化身であり、神聖な山(比婆山)に何かあったときにだけ里に現れるのだという。

時は高度経済成長期、開発という美名のもとに比婆山の森は大きく崩し取られ、スキー場がつくられようとしていた。



人は興味本位から、未知の生物に憧れる。

そして実際に会った時には、どんな思いがするものだろうか?

世界各地に語り継がれる伝説を聞くと、そこには「敬意」がうかがわれる。



同様の思いを、類人猿学者の島泰三氏はゴリラに感じたという。

「ゴリラには到底こちらが及ばないなと思うような崇高さっていうのが、心の中にあります、明らかに彼らの中には。ゴリラはしっかり目を見てやらなきゃいけないんです」

たいていの野生動物が「目を見る」というのは、威嚇であると島氏は言う。だが、ゴリラの場合はそうとは限らないのだという。

「その150kgもあるような大きな大地の主がそこにいて見た時に、そのゴリラの目っていうのは、すーっと落ち着いているんですよ。『毛皮の外観』に騙されてはいけないっていうことです。毛皮の外観を見ただけで、我々よりも下かなって思ってはいけないということです」



ゴリラの澄んだ眼差しに、島氏は「我々よりも遥かに上の精神をもっている動物」と感じたという。

「ビッグフットの中にそれを感じるかもしれないというのは、我々にとっては大きな望みだということです」



北米に住むクヌート族の間では、ビッグフットを「姿を見せない隣人」と言う。

「僕らは彼らは”シアコ”と呼ぶ。シアコは僕らの兄弟、家族だ。姿は見せないけど、いつもそばにいるんだよ」

そして、こう続ける。

「僕らが探せば探すほど、見つけるのは難しくなる。もう探すのをやめた時、彼らは姿を見せてくれるのさ」













(了)






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出典:幻解!超常ファイル「謎の獣人・ビッグフット」


posted by 四代目 at 06:50| Comment(0) | 山々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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