2013年03月10日

星はどう死ぬのか? 白色矮星・中性子星・ブラックホール


宇宙の星々は、どうやって生まれるのか?

そして、どう死ぬのか?

「じつは星の誕生については、まだ判っていないことが多い。むしろ、終わり方のほうがよく知られている」

そう語り始めるのは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のルーウィン教授。



「星は分子雲というものの中で生まれることがわかっており、星が死ぬ時、それは白色矮星になるか、中性子星になるか、あるいはブラックホールになる」と教授は説明する。

さて、宇宙の星々はどのような生涯を送るのか?



◎星のゆりかご


宇宙の星々が産声をあげるという「分子雲」。

それは主に水素分子からなる高密度のガスであり、別名「星のゆりかご」とも呼ばれている。



なぜ、宇宙の雲から星が生まれるのか?

それは、その雲が極めて重たく(太陽の何百万倍もの質量)、とてつもない重力を持っているからである。分子雲というのは、フワフワの綿菓子などでは決してなく、想像できないほど重厚なガスなのである。



ではなぜ、重力が星を生むのか?

その途轍もない重力によって、雲を構成する水素原子はその中心へ向かって、真っ逆さまに落ちていく。すると、水素分子の重力による位置エネルギーは「運動エネルギー」に変換され、さらに「熱エネルギー」に変わる。



「たとえば、こういうことだ」。

そう言って、ルーウィン教授は自分のバッグをポイと放り投げる。ノートパソコンが入っているというそのバックは、バーンという大きな音をたてて床に叩きつけられた。

教授のバッグが落下したのは、「高さ」という位置エネルギーによるものであり、そのエネルギーは「落ちる」という運動エネルギーに変わった。そしてバッグが床に叩きつけられた時、バーンという音とともにカバンは熱エネルギーを発したのだ(ついでに中のPCも破壊され、さらなる熱エネルギーを発したかもしれない)。



床に落ちるバッグと同じ原理によって、宇宙の分子雲の中の水素分子(バッグに相当)は、重力によって中心(床に相当)に向かって落ちていく。その時、水素分子は膨大な「熱エネルギー」を放出することになる。

その結果、「自己重力をもった分子雲の温度は、数1,000万℃になることがある」とルーウィン教授。

温度がそこまで高くなると、分子雲の中では「核融合」が始まる。さあ、ここからがいよいよ星の始まりだ。







◎核融合


核融合というのは、2つの原子核が融合し、大きなエネルギーを放出する現象のことである。

最初は当然、水素原子同士の核融合から始まる。そしてその結果、水素が「ヘリウム」になり、ヘリウムはヘリウム同士で核融合を始める。すると、ヘリウムは「炭素」になり、炭素は炭素同士で核融合を始め…。

こうした核融合の連鎖反応が、星を生み出す根源的なエネルギーとなるのである。



もう少し詳しく言うならば、水素が核融合によってすべてなくなった後、星はいったん「縮む」。それは核融合による外側へ向かうエネルギーが、重力による内向きのエネルギーに押されてしまった結果だ。

※星の大きさというのは、外側へ向かうエネルギー(核融合)と、内側へ向かうエネルギー(重力)の絶妙なバランスによって決定されている。

しかし、星が縮んだ時、星のエネルギーは逆に増大する。なぜなら、星の中心へと向かう重力エネルギー(縮むエネルギー)が、新たな運動エネルギーと熱エネルギーを生み出すからである(床に落下するカバンのように)。



星が縮んだ時に発する、この新たな熱エネルギーが起爆剤となり、次なるヘリウムの核融合を誘発する。そして、ヘリウムがなくなるとまた星は縮みながら新たなエネルギーをチャージして、今度は炭素の核融合を引き起こす。

「炭素を使い切ると、次は酸素だ。そしてネオン、最後にはケイ素が核融合する。すると『鉄』ができて、ここで核融合は終息する」と、ルーウィン教授。

なぜ終息するのかといえば、鉄が融合する時、エネルギーを放出するのではなく、吸収してしまうからである。



水素 → ヘリウム → 炭素 → 酸素 → ネオン → ケイ素 → 鉄。

この順に核融合のエネルギーはどんどん高まり、温度はウナギ登りに上昇する。水素の核融合が続いている時の温度が3,000万℃ほどだとすると、鉄が生まれる時の温度は、その100倍の30億℃にまで達する(星の質量によって異なるが)。

一方、温度が上昇するに連れ、核融合のスピードは加速する。水素による反応は数十億年も続くことがあるが、ケイ素が鉄に変わる最終段階は数日しか続かないのだという。



◎星の寿命


「星というものは、質量が大きいほど寿命が短い。これは君たちの直感に反するかもしないが…」とルーウィン教授は言う。

直感的には、星は大きければ大きいほど核融合がたくさんできるので、寿命が伸びそうな気がする。しかし、実際にはその逆の現象が起こるのだという。



「大きな質量をもつ星は、小さな星よりも核燃料の消費が多く、すぐに使い切って死んでしまうのだ」と教授。

なるほど、大きな星ほど「燃費が悪い」ということか。



たとえば、われわれの太陽の寿命は、およそ100億年と考えられている。ところが、太陽の質量の60倍も大きい星の場合、その寿命はたったの300万年(仮に太陽の寿命を100歳とすれば、この星は生後4ヶ月足らずで死ぬことになる)。

ちなみに、現在の太陽の年齢は50億歳。残りはあと50億年。

「その時、太陽は現在の50倍の大きさ(巨星)にまで成長し、火星も金星も、もちろん地球も滅亡する」と、ルーウィン教授は言う。



◎白色矮星(はくしょく・わいせい)


冒頭にルーウィン教授が述べたように、「星が死ぬ時、それは白色矮星になるか、中性子星になるか、あるいはブラックホールになる」。

そのいずれかになるのかは、その星の「重さ次第」である。

質量が太陽の8倍以下であれば「白色矮星」、太陽の8倍から25倍以下であれば「中性子星」、それ以上であれば「ブラックホール」になるということだ。



星が核融合の燃料を使い果たした時、その星は自分の重力に押され、耐え切れなくなり、そして「崩壊」に向かう。

その際、星の上層部のガスは宇宙空間に散ってしまい、残されるのは「コア」と呼ばれる星の核となる部分だけである。その星の質量が太陽の8倍以下であれば、その残されたものが「白色矮星」である。

「典型的な白色矮星の質量は、太陽の半分かもう少し大きかだ。半径は地球と同じくらいの大きさだ(約1万km)」とルーウィン教授。



◎見えない天文学


人類が最初に発見した白色矮星は、「シリウスB」という星である。

シリウスは周知の通り、夜空で一番明るく輝く星であるが、ドイツの数学者ベッセルは「シリウスとして知られる明るい星の隣りには、『見えないもう一つの星』があるはずだ」と予言した。



これは、そのベッセルの言葉である。

「宇宙の物体にとって、『明るさ』が不可欠の要素だと考える理由はどこにもないのです。『見えない星』がないとは言えないのです」

通常、人々は見えないものを信じない。しかし、ベッセルばかりは見えないものを信じた。

「これは驚くべき発想の転換だ。彼は『見えない天文学』をはじめたのだから」とルーウィン教授も感嘆する。



ベッセルの予言した「見えない星」を実際に見つけるのは、アメリカの望遠鏡設計者の息子、グラハム・クラークである(1862)。

父親の最新の望遠鏡をのぞいていたクラークは、明るいシリウスの隣りに、とてもかすかに、シリウスの一万分の1程度の暗さの星を発見した。そして、彼は気がついた、これがベッセルの予言した「見えない星」であることを。



よく知られた明るいシリウスは「シリウスA」、そしてそれに伴う暗いシリウスは「シリウスB」。この2つの星は、半世紀かけて両者の中心を一周する「連星」であった。

長らく、このシリウスBの存在が認められなかったのは、容易に見えないからだけではなく、計算によるとシリウスBの重さが1立方cmあたり100万gという「馬鹿げた数字」だったからだ。

「シリウスBは水よりも100万倍も密度が高いというのか? この星は1リットルで100万kg(1,000トン)もあるというのか? 小さじスプーン一杯で5トンなどという数字は馬鹿げている」



今では明らかなことであるが、白色矮星はそれほどに重い星であったのだ。



◎中性子星


白色矮星の質量は、最大でも太陽の1.4倍にしかなれない。1930年、アメリカの天体物理学者、チャンドラセカールは計算でそれを求めた。

では、質量がそれ以上になるとどうなるののか?

「白色矮星は不安定になり崩壊してしまう」

するとどうなるのか? チャンドラセカールにはそれは分からなかった。ただ「崩壊するしかない」ということを数字だけが示していたのである。



白色矮星の崩壊後、「中性子星」になるという仮説を発表したのは、2人の天文学者、フリッツ・ツビッキー(スイス)と、ウォルター・バーデ(ドイツ)である(1934)。

「純粋に中性子でできた星が、超新星爆発で生まれる」。2人はそう言った(質量が太陽の8倍以上、25倍以下の星の場合)。

中性子というのは、原子核の陽子に電子が取り込まれたものであるが、それが発見されたのは、わずか2年前(1932)のことであった。



◎超新星爆発


中性子星を生むという「超新星爆発」とは何か?

それは、白色矮星が質量の最大限界(太陽の8倍)を超えた時、途轍もないエネルギーの放射とともに崩壊することだ。

「この時のエネルギーの放出は、とてつもなく大きい。太陽が100億年の寿命を費やして放出するエネルギーの100倍ものエネルギーを、わずか一秒以内に放出する計算だ」とルーウィン教授は説明する。



白色矮星の崩壊は、およそ1,000分の一秒という短い間に起こる。その瞬間、温度はおよそ1,000億℃にまで急騰する。

それは白色矮星が中性子星になるとき、その大きさが極端に小さくなるからだ。先にも床に落とすバッグで説明したとおり、星が縮む時、位置エネルギーが減った分、運動エネルギーと熱エネルギーが増えるのである。

この非常に大きなエネルギーの放出が巨大な爆発となる。これが超新星爆発である。



白色矮星がどれほど小さくなって、超新星爆発を起こすのか?

アメリカの物理学者オッペンハイマーは、中性子星の半径がおよそ10km程度であることを突き止めた。

「たった10kmだ。白色矮星の1,000分の1の小ささだ。すると、中性子星の密度は元の白色矮星の10億倍。もはや想像のレベルを超えている。小さじスプーン一杯が50億トンの重さなのだ…!」とルーウィン教授。



◎小さな緑の人


1967年のある日、ケンブリッジ大学の大学院生「ジョスリン・ベル」は、空のある方向から「バルス状の電波」がやって来るのを発見した。

パルスというのは極く短い時間だけ発せられる電波のことで、彼女の発見したパルスの間隔は1.33秒であった。



「研究チームは興奮に包まれた。自分たちが歴史上もっとも重大な発見をしたと考えたからだ。『何らかの知的生命体』が地球と交信を求めてると思ったのだ。そこで、このパルスを『小さな緑の人(little green men)』と呼んだ」

そうルーウィン教授が言った途端、会場は大笑い。そりゃそうだ。そのパルスは宇宙人からのものではなく、中性子星の発するものだったのだから。



「小さな緑の人」が発表された時、ガルト教授は「それは回転する中性子星に違いない」と主張した(1968)。

しかし当時、その主張は受け入れられなかった。1.33秒という自転速度は、考えられないほどに高速だったからだ。地球は24時間もかかるというのに、その6万5,000倍も自転速度が速いなんて…!

「小さな緑の人」が何個も発見されると、さすがにもう、それが宇宙人からの信号だと言う者はいなくなっていたが、中性子星であるという飛躍には皆困惑を隠せなかった。



◎高速の自転


だが、星は小さくなればなるほど、その回転(自転)を増すのは「角運動量保存の法則」で明らかだった。

「角運動量保存の法則」というのは、フィギュアスケートでも有名な法則だ。回転する時に腕を水平に大きく広げれば、ゆっくり回り、腕を胸元に縮めると速く回転する。



それと同様、白色矮星が突然縮んでしまった時、つまり半径10kmの中性子星になった場合、大きさは元の1,000分の1。すると、角運動量保存の法則により、その回転速度は元の100万倍以上に高速化する。

「中性子星は白色矮星よりも毎秒100万倍以上の速さで回る。だから、1.33秒という数字は驚くようなものではない」とルーウィン教授は言う。



ケンブリッジ大学の大学院生、ジョスリンがキャッチした1.33秒というパルスは、明らかに中性子星が発するそれであった。白色矮星よりもずっと暗い中性子星は、目では見えない。だから、そこから発せられるパルス(正確にはX線)のみが、その唯一の手がかりとなるのである。

中性子星のパルスは、地球でいえば北極と南極にあたる磁北極と磁南極から発せられる。それはあたかも、灯台が回転しながら断続的に光を届けるように、中性子星からの電波ビームも、地球にはチカチカと瞬きながら届く。その間隔が1.33秒、つまりその中性子星の自転速度であった。



ちなみに、このパルサーの発見は、ジョスリンの指導教官であったアントニー・ヒューイッシュをノーベル賞に輝かせることとなる。

ところが、それを実際に発見したはずのジョスリン本人は共同受賞者として認められなかった。ノーベル賞の選考員はなぜそんな結論を下したのか? その真相は分からない。



「彼女がまだ大学院生だったのがいけなかったのか? 彼女が女性だったから? あるいは、その両方だったのが良くなかったのか?」

ジョスリンを個人的に知るルーウィン教授は憤慨する。

「真相が明かされることはないだろうが、これはいわば、『天文学的な大きさの誤りだった』と私は思う」と教授。「彼女は自分がノーベル賞を受賞しなかったことを不当には思っていない。しかし、世界中の天文学者たちはそうは思っていないことを付け足しておく」。



◎かに星雲


「中性子星は本当に超新星爆発で生まれるものなのか?」

超新星爆発の残骸とされるのが「かに星雲」。

「この爆発は1054年に起きたものだ。中国には当時の天文学者たちの記録が残されている。超新星爆発は昼間ですら数週間にわたって見えるほどだった。夜空では何ヶ月も一番明るい星だった」とルーウィン教授。



ところが、ヨーロッパにはその記録が一切ない。

「私の母国オランダで記録がないのは理解できる。あそこはいつも雨だ。だからオランダ人には落ち度はない」と愛国心をのぞかせる教授。「しかし、スペインやイタリアやギリシャはどうだ? 昼間でも数週間にわたって見えるくらいの明るい星を、なぜ誰も書き残さなかったのか? まったくの謎だ…」。



さて、その超新星爆発の残骸である「かに星雲」の中からは、周期が0.33秒のパルスが発見されている(1968)。一秒間に30回も回転する速さである。

かに星雲は地球から6,000光年のかなたにある。1光年は光が一年かけて移動する距離。

「たとえば、飛行機に乗って宇宙を飛ぶことができたら、1光年の距離を飛ぶのに100万年かかる」とルーウィン教授。

つまり、かに星雲まで飛行機で行けたとしても、60億年かかってしまうわけだ。60億年後には、もう太陽もなければ地球もないではないか…。



中性子星は目に見えないが、超新星爆発は今でも一目でわかる。その明るさは「銀河全体が発する明るさ」に匹敵するのだから。

「銀河全体には約2,000億個の星がある。だから超新星爆発をした星は、2,000億個の星と同じだけのエネルギーを毎秒放出しているということだ。本当に驚くべきことだ」とルーウィン教授。

かに星雲の中にあるという中性子星は、半径およそ10km、小さじ一杯が50億トンの重さ。それが毎秒30回の速さで回転している。

「これを驚異的だと思わないようなら、君たちには何を教えてもムダだ。だからもう帰っていい」と言って、ルーウィン教授は場内の笑いを誘う。



◎ブラックホール


さて、いよいよ最後のブラックホールの話である。

「理論上、中性子星は太陽の質量のおよそ3倍までしか重くなることができない。その質量を超えると中性子星は崩壊し、その終着がブラックホールになる」とルーウィン教授。



ブラックホールには表面がない。体積もゼロ。

「ブラックホールは『特異点』と呼ばれる点だ。特異点の密度は無限大だ」と教授は言う。

この特異点を扱える物理学は未だに存在しない。量子重力については、ちゃんとした理論すらない。

「これについては手も足も出ない。とにかく全てがこの点にある」と教授。



ブラックホールたる特異点の周りには、ある空間的境界があるとされ、それは「事象の地平面」と名付けられている。

「事象の地平面の外側にいれば、君たちは地球に戻ることができる。とんでもないスピードが必要だが、理論上は脱出できる。しかし、この内側にいる場合、地球に戻ることは決してできない」とルーウィン教授は説明する。

事象の地平面の内側からは脱出するには、光速を超える速さが必要とされるが、残念ながら宇宙に光速を超える速さの存在は許されていない。つまり、光ですら事象の地平面の内側からは外に出ることができないのである。







◎はくちょう座X-1



光をも取り込んでしまうブラックホールを見ることは不可能だ。ブラックホールからは何モノも抜け出すことはできない。

だが、「はくちょう座X-1」の中には、ブラックホールが存在すると確信されている。「白い鳥(はくちょう)」の中に「黒い穴(ブラックホール)」が開いているというのも詩的な話だが…。

「見えないけれど、そこにはブラックホールがある。これが知識の素晴らしさだ。たとえ見えなくても、存在を知ることができる」とルーウィン教授は語る。



なぜ、ブラックホールの存在を知ることができるのか?

そのカギとなるのが「吸収線」と呼ばれるものだ。それは特定の色(エネルギー)が欠けている部分であり、「吸収線」は虹色のスペクトルの一部を、黒く塗りつぶす。

2つの連星が、両者の間を中心に回転する時、それらは地球に近づいたり遠ざかったりする。すると「ドップラー効果」という現象が起こる。救急車のサイレンが近づいた時に音が高くなり、遠ざかればその音が低くなるという、あれだ。



星が地球に近づいている時、その星の吸収線は少し青色の方へずれる(青方偏移)。逆に、その星が遠ざかっている時は、少し赤の方にずれる(赤方偏移)。それは、距離によって音が高くなったり低くなったりするのと同じ原理である(ドップラー効果)。

このドップラー効果を利用すれば、遠く離れた星の動きやその速さを知ることができる。星の音を聞く代わりに、星が放射する光(具体的には吸収線)を観測すればよいのである。







◎連星


ちょっと待ってくれ。

ブラックホールは光も何モノも外へ放射しないのではなかったか?



その通り。

しかしマレに、そのブラックホールが連星を形作っていることがある。もし、連星の相方が「見える」のであれば、見えないはずのブラックホールの存在も知ることができる。

それが「はくちょう座X-1」の中にはあるのだという。



核融合を続ける元気な星の発するエネルギーが、連星の相方に吸い込まれているように見える時がある。まるで糸巻きの糸が、別の糸巻きに巻き取られていくように。

この場合、エネルギー(糸)を提供する側の星を「ドナー星」、受け取る側の星を「降着星」と呼ぶ。



ドナー星の出す可視光線(目に見える光)を調べた時に、欠けている色(吸収線)があるのは、その色が降着星によって吸い取られてしまっているためだ。

そして、そのドナー星の吸収線が青寄りになったり(青方偏移)、赤寄りになったりする(赤方偏移)のは、まさに何かとペア(連星)になって、どこかを中心に公転しているからに他ならない。



◎これはブラックホールに違いない


青方偏移の最大値が、赤方偏移の最大値にうつるまでの時間は、それがそのままドナー星の軌道周期となる。さらにドナー星の速さも求められる。

その計算の結果、はくちょう座X-1の中に発見された連星の軌道周期は「5.6日」であった。

そして、その降着星がブラックホールである可能性は明らか。その降着星の質量が太陽の15倍の質量を持つことが明らかになっているからだ(先述した通り、太陽の質量の3倍以上であれば、その星はブラックホールにならざるを得ない。元の大きさは太陽の25倍以上だ)。



このブラックホールの発見当時、ある有名な天文学者は「これは平凡な星にすぎない」と発表していた。

「そうは納得しなかった研究者たちがいたことは、幸運なことだ」とルーウィン教授。「彼らは吸収線を研究して軌道の周期を見つけた。そして、『これはブラックホールに違いない』と結論づけたのだ!」。

ちなみに、「そうは納得しなかった研究者」の一人が、ルーウィン教授のかつての教え子とのことである。



「さて、このように幾つかの幸運な星は、死んだ後も別の形で生き続ける」

いよいよルーウィン教授の講義も終わりに近い。

「ただし、良き伴侶を見つけて連星になる必要がある。私が君たちに願うのは、死後ではなく、人生を生きている間に良き伴侶を見つけて、輝き、幸せであることだ(満場の拍手)」



かくも壮大な星の一生。

かつてベッセルの言った通り、宇宙に存在するのは「目に見える光」ばかりではなかった。光が消えたからといって、その星が死んだとは言い切れない。



宇宙を知ること、それは何を知ることなのだろうか?

それはまるで、「知らない」ということを知ることのようにも思えてくる。



「知らない」ということの先には、いったい何があるのだろう…?

知っていることが増えれば増えるほど、皮肉にも「知らない世界」はますます広がっていくようでもある…。







(了)



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出典:NHK MIT白熱教室「星はどう生まれ、どう死ぬのか?」



posted by 四代目 at 09:14| Comment(1) | 宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
感動しました。宇宙の神秘を感じました。
言葉には表せないですね。ありがとうございました。
Posted by at 2013年04月25日 13:15
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