2012年12月16日

「笑いすぎにはボケきたる?」。ガンと笑いとマイナスと


「いいか、今日の実験では『これ』を舐めてみる!」

そう言って教授が取り出したのは、ある患者の「採尿」。しかも、その患者は「糖尿病」である。

ドン引きする医学部の学生たち。



「これくらい出来なくて、医者になれるわけないだろ! 出来ないヤツには単位をやらん!」

なんとも無茶苦茶な教授である。

「いいか、こうやって舐めるんだ」

尻込みしている学生たちを前に、その教授は自らの「人差し指」をビーカーに突っ込んでペロリと実践して見せる。



ギョッとする学生たち。

「もはや、やむなし」、そう観念した学生たちは目をギュッとつぶったまま糖尿病患者の尿を舐め、そして一様に顔をしかめる。

「よくやった」と満悦至極なその教授。



みんなが尿を賞味し終わった後、教授はこんなことを言い出した。

「いいか、医者は勇気だけではダメだ。冷静な『観察眼』が求められる。思い出せ、私が舐めたのは『中指』だ」

じつはこの教授、「人差し指」を尿のビーカーの中に突っ込んで「中指」を舐めた。つまりは、尿を舐めていなかったということだ。

なんとなんと、ハタ目には笑える話であるが、学生たちには全く笑えない話であった…。



このトンでもない教授の名は「村上和雄」氏。世界で初めて高血圧原因酵素の遺伝子を解読した彼は、「ノーベル賞に最も近い男」とも言われている。

その彼がこの実験で学生たち言わんとしたことは、じつは医者としての勇気でもなければ、観察眼でもなかった。

むしろ「笑い」の方だった(もっとも、ブラック過ぎたジョークに学生たちは教授に怒りすらを感じていたのだが…)。



◎アルファ波


「笑う人間にガン患者はいない」

笑うことによって「免疫力」が強化されるというのが、その根拠とされる。

人間の免疫力としての実行部隊は「ナチュラル・キラー細胞(NK)」。このNK細胞が作られるのは「笑っている時」なのだそうだ。



「笑っている時」の脳波を調べてみると、「α(アルファ)波」という状態にある。

身体は基本的に2つの波動でコントロールされており、その一つがこのα(アルファ)波、そしてもう一つがβ(ベータ)波である。

α(アルファ)波は笑いに代表されるように、リラックスして身体が緩んでいる時のもの。一方のβ(ベータ)波というのは、戦闘モードや逃走シーンなどなど、生命の危機に直面した時に発せられる動物的な本能である。



◎根暗で頑固


どんな健康な人でも、毎日5,000個以上のガン細胞が発生しているという。

健康な人の体内では、自己免疫の防衛隊である「ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)」がそれらのガン細胞を撃退しているわけだが、その働きが弱まると、ガン細胞の横行を許してしまうことになってしまう。

ガンになるかならないか、それは「一日一回以上、笑うかどうか」。それが分かれ道になるのだという。というのも、笑えば身体がα(アルファ)波の状態になり、ナチュラル・キラー細胞がたくさん作られるからでもある。



なるほど、α(アルファ)波という状態は実に好ましい。

「根暗で頑固、マイナス思考で笑いのない人は必ずガンになる」

そう言われるのは、そういう人は慢性的にアルファ波から遠ざかって、緊張感あふれるβ(ベータ)波の状態が長く続いているからである。



「ガンだと分かったら、絶対に病院へは行かず、きれいなオネーさんと一緒に温泉でも訪れる。おいしい料理と明るい音楽に囲まれて楽しく大笑いしていれば、すぐに治る」

極端に言えば、そういうことにもなる。



◎ボケ


かと言って、いつもいつも楽しくお気楽に毎日を過ごすことにも問題がある。

「α(アルファ)波に浸り続けると『ボケ』がはじまる」

ガンが治りすぎて、今度はボケになるというのである。



根暗で頑固のβ(ベータ)波は、外敵から身を守るためには必須の精神状態であり、決してそれを悪者扱いするわけにはいかない。

ただ、あまりにもβ(ベータ)波の状態、つまりストレス状態が長く続くと胃袋に穴が開いてしまう。



アルファ波はアルファ波でボケの恐れがあり、ベータ波はベータ波でストレス疲労の恐れがある。

要するに、どちらの状態も一長一短であり、そのどちらもが必要なのである。

「このバランスで健康を維持しなければならない」



それでもどうやら、現代人はストレスフルなβ(ベータ)波にさらされやすい。それゆえに、プラス思考やリラックスがもてはやされるのであろう。

たとえば、お気楽な南国の島国などでは逆に、根暗で頑固が奨励されるのかもしれない。



◎人それぞれ


厚生労働省の調査によると、日本人の長寿の秘訣は「心配事をためないこと」なのだという。

「だって」「でも」「どうせ」の「否定3D」ばかりの人は、心に毒をまくことにもなり寿命をも縮めてしまうというのだ。



「笑う門には福きたる」

しかし、「笑ってばかりの門にはボケきたる」



影もあれば日向もある。

厚労省の結論を鵜呑みにするのも良ければ、却下するのもまた良し。

教授が笑っていても、学生たちは怒っているかもしれない。笑うのは楽しいが、笑われるのは楽しくない。



プラス思考を楽しむ人もいれば、悲観論を楽しむ人もいる。どっちもどっち、半分半分。

「笑いたければ笑えばいいさ、落ち込みたければ沈んでいろよ」

心のバランス、それは畢竟「人それぞれ」なのであろう…。







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出典:農業経営者 2012年11月号(200号)
「Something Great! 黒木安馬」

posted by 四代目 at 05:41| Comment(0) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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