2012年12月07日

加工食品に課された熾烈な運命。賞味期限との戦い


まだ食べられる食品を「捨てる」のは、食品業界の常識だ。

それを端的に示すのが「3分の1ルール」という商慣習。賞味期限までの日数が3分の1を過ぎてしまう前に納品しなければならない。

たとえば、あと30日後に賞味期限を迎える食品であれば、10日以内に納品する必要に迫られるのである。



では、もしその3分の1の期間を経過してしまったら?

廃棄処分、つまり捨てられることとなる。その額、年間で1,140億円相当というたいそうな量である。



また、スーパーなど小売の店頭では「3分の2ルール」というものが存在する。

たとえば、設定された賞味期限が製造から30日間であれば、3分の2にあたる20日間が経過した時点で、「値引きあるいは廃棄」されることとなる(一部は食品メーカーに返品)。この段階でロスする食品の総額はおよそ420億円。



これら「3分の1ルール」と「3分の2ルール」を合わせた食品ロスは、合計で1,600億円相当。ちなみに、事業系(製造・卸・小売)全体の食品廃棄の量は756万トンで、そのうち「まだ食べられる食品の量」は300万トン、つまり製造された加工食品のおよそ40%近くが食べずに捨てられていることになる。

これが「賞味期限が切れていない加工食品」の末路である。





ところで、賞味期限というのは、いかなる根拠で決められるものなのか?

微生物検査や官能検査など幾多の検査を経た食品は、問題の発生した日数までの70〜80%がその賞味期限と定められる。たとえば100日目で検査に異常が出た食品であれば、100日の70〜80%にあたる70〜80日間がその賞味期限に設定されることになる。

ということは、賞味期限を20〜30%経過してしまっても食べられないわけではない。ましてや、賞味期限が過ぎたからといって、即座に異常が発生するわけでもない。賞味期限はもっとずっと安全に設定されている。



ふたたび翻って「3分の1ルール」を見てみよう。

賞味期限という日数自体が安全設計されているところに、このルールが加わることで、「本来食べられるであろう期間」の23〜26%で食品は廃棄されることとなる(70〜80% × 3分の1)。

また、小売の段階で廃棄が目前と迫る「3分の2ルール」の場合でも46〜52%(70〜80% × 3分の2)、すなわち食品が「本当に食べられなくなるであろう期間」の半分程度で見切りをつけられていることとなる。



加工食品の運命とは、かくも短きものなのか…。

遅くともその寿命の半分を迎えるまで花を咲かせなければ(売れなければ)、捨てられるという宿命を背負わされている。



こうした悲運の中の唯一の救いは、廃棄される食品にも「リサイクル」という道が残されていることである。

たとえば、食品の製造段階では廃棄食品の94%もがリサイクルに回される。たとえ3分の1という厳しいルールに引っかかってしまっても、その多くが生き残りの道を与えられているのである。

ところが、このリサイクル率は川下へ行くに従って、だんだんと流れが乏しくなっていく。スーパーなどの小売業のリサイクル率は37%にまで低下し、ファミレスなどの外食産業となればそれは17%という数字にまで落ち込む。

「川下では廃棄物が分散しているため、集めることが難しいのであろう」





さて、じつは上述してきた事業系(製造・卸・小売)以上に食品を無駄にしている部門がある。

それはお察しの通り「家庭系」である。事業系756万トンの食品廃棄に対して、家庭系のそれは1,032万トン(事業系の1.37倍)。

そして、家庭の冷蔵庫から「まだ食べられる食品」が捨てられる量はおよそ200万トン、廃棄量の約20%に相当する。南極料理人も真っ青だ…。



現代は飽食の時代なのであろう。

至るところに食品は完備されている。

しかし、その至れり尽せりの過程には無駄があることもまた事実。



備えあれば憂いなし。

かといって、備えすぎては…。







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出典:農業経営者 2012年11月号(200号)
「1,600億円 賞味期限が切れていない加工食品が1年間に廃棄された金額」

posted by 四代目 at 03:43| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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