「フォアグラ」とはフランス語であり、「脂の多い(グラ)肝臓(フォア)」という意味である。
通り名がフランス語だけあって、その生産量もフランスが「世界一(80%以上)」。美食のイメージが強いフランスらしい数字とも言える。
フォアグラは主に「ガチョウ」の肝臓のことである。
ガチョウには肝臓に脂肪を貯め込む性質があるのだという。
なぜなら、ガチョウの祖先は「渡り鳥(雁)」であり、長距離の飛行に耐えるために、エネルギーを蓄積しておく必要があったためである。
彼らの不運は、渡った先の人間に見初められたことに始まった。
脂肪を蓄積した「肝臓」の美味いこと、旨いこと…。
牛肉の脂などの溶ける温度は38℃ほどであるのに対して、フォアグラの脂はその半分近い21℃ほどで溶ける。つまり、口の中でやすやすとトロけるのである。

「もっとフォアグラが食べたい!」。火のついた人間の欲望は、もう止まらない。
フォアグラをできるだけ大きくしようと、これでもかとエサを与えた。しかし、なかなか肝臓は大きくならない。なぜなら、彼らの主食は繊維質な「牧草」であり、消化に時間がかかるわりに、得られるエネルギーが小さかったのだ。
ガチョウの肝臓が急激に「肥大化」するのは、栄養価が高くて消化のよい「トウモロコシ」が広大なアメリカ大陸からもたらされて以降である。
それでも、動物には「満腹中枢」というものがあるので、ガチョウたちも必要以上にはエサを食べない。
そこで一計が案じられた。
悪名高き「強制肥満化(ガバージュ)」である。
ガチョウの口に管を突っ込み、胃袋にエサが入るだけ詰め込むのである。一日3回、一ヶ月ほど続けられる。

この作戦は見事に奏功し、ガチョウの肝臓の大きさは通常の10倍以上となり、その脂肪率は50%を超えた。
人間の場合、肝臓に脂肪が貯まると「病気(脂肪肝)」と診断される(食べ過ぎ・飲み過ぎ)。そして、その脂肪率は「5%以上(正常値は3〜5%)」。
この数値と比べれば、フォアグラの脂肪率の異常さが浮き彫りになるであろう(10倍)。
強制的に肥満化させられたガチョウたちは、もはや実験動物のようである。
通常飼育と比べると、その死亡率は10倍にも20倍にもなるという。正常な肝臓機能がすっかり損なわれ、肝臓で処理すべき「毒素」が全身に回ってしまうためでもある。
もはや、飛ぶことも歩くこともままならない。時には息をすることさえ困難になる。
それでも、その病的な肝臓は「世界三大珍味」の一つとして、世界中で愛されているのである。
当然、動物愛護団体は猛烈に抗議する。
「動物虐待だ!フォアグラを食うな!」
美食家たちの旗色は、極めて悪い。
ヨーロッパ各国では、ガバージュ(強制給餌)が軒並み禁止・違法とされ、来年(2012)からはアメリカ(カリフォルニア州)でも禁止される。
機内食でも扱わない航空会社も増えており、フォアグラを扱わないスーパーやホテルなども増えている。
その渦中の中心にある「フランス」は、周辺諸国がフォアグラの生産を次々と断念していくために、着々と市場シェアを固めつつある(シェア80%以上)。
フランスではフォアグラを「文化の遺産」と称し、積極的に保護する姿勢を見せており、ガバージュ(強制給餌)に関しても「止むを得ない」との見解を示している。
このフランスの態度は、「原発」に対する姿勢とも軌を一にしている。
周辺諸国(ドイツ・イタリア・スイス)が原発の放棄を宣言する中、原発大国のフランスは一貫して原発の支持を表明している。
ところで、肝臓の肥大化に関しては、日本で面白い研究が行われている(農研機構畜産草地研究所)。
今まではエサをやりまくって太らせていた肝臓だが、ここでは逆にエサを「制限」することにより、肝臓を肥大化させることに成功している。
具体的には、エサの中の「タンパク質」を極端に減らす。
タンパク質が足りないと、動物の身体は大きく成長できない。すると、炭水化物や脂肪などの栄養素が「余ってしまう」。
そして、その余った栄養素が「肝臓」に貯め込まれる。少量のエサとはいえ、タンパク質の量が少ないと、必然的に肝臓に脂肪がついていくというのだ。

この現象は、低タンパク食による「ダイエット」でも見られるものである。
摂取するタンパク質の量が少ないと、体重が減っていくにも関わらず、肝臓には脂肪が蓄積され「脂肪肝」という病気になってしまうのである。痩せていくのに、肝臓だけには脂肪が貯まるという不思議な現象である。
この現象は、飢餓を生き抜くための動物の知恵とも言われている。
果たして、エサの量を減らしても、通常よりも肝臓に脂肪がつく方法が示された。
まさに「逆転」の発想である。
フォアグラの歴史は3,000年以上にもなるというが、強制的にエサを突っ込まれるようになったのは17世紀以降、ここ300〜400年であるという。
この間に、ガチョウたちは大きな変化を体験することとなった。美食という人間の欲望のために…。
ガチョウたちは大空を忘れ、飛ぶことも忘れた。

現在、中国ではガチョウの飼育が盛んになりつつあり、「金のタマゴ」だとも言われている。
グリム童話に登場する「黄金のガチョウ」は、ある男に類マレな幸運を提供することとなるが、肝臓の肥えたガチョウは、まさに現代における黄金のガチョウであろう。
本来は「粗食にもよく耐える」と言われるガチョウであるが、よりによって「大食」を強いられるとは奇妙な話である。
食えぬ不幸に、食わされる不幸。
不幸と不幸の間の幸福は、ガチョウにとっては遠い遠いもののようである。
ガチョウが腹を空かすのは、いつの日か…。
関連記事:
健全に育てられる「イベリコ豚」。広大な土地と良質なエサが約束された珍しい家畜。
ペットとして大人気のミニブタ。意外にも清潔で賢いブタたち。
ブタの臓器を人間に。おぞましくも有望な未来。「iPS細胞」の可能性。
出典:いのちドラマチック
「ガチョウ 家畜になった渡り鳥」


先日メッセージを送らせていただいた者です。
その後、ご検討いただけましたでしょうか?
可否だけでもお伝えいただければ幸いです。
お忙しいところ失礼いたしました。
それではありがたく参考にさせていただきます!
お手数をおかけいたしました。