2011年11月17日

「ブラックホールを見てみたい!」、その欲望が開いた宇宙への新たな扉。


「怪しいげな科学者たちが『ブラックホール』を作り出そうとしているらしいぞ…」

「何っ!そんな恐ろしいモノができたら、地球がスッポリ飲み込まれてしまうではないかっ!」

「今すぐ、止めさせろっ!」



ウソのようなホントの話である。

フランスとスイスの国境には、CERN(欧州原子核研究機構)というトンでもなく巨大な地下実験装置(山手線ほどの巨大さ)があり、その施設で「ブラックホール」を生み出す実験が、まさに行われているのである。

その怪しげな地下活動に世間は騒然となり、新聞ザタにまでなった。



「たとえ、小さなブラックホールだとしても、次々と物質を飲み込んでいくはずだ。

そうなれば、針の穴ほどだったブラックホールがみるみる巨大化し、ヨーロッパを吸い込み、ついには地球までも…。

小さいからと言って、穴どれないぞっ!」

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その辺りを、科学者に聞いてみよう。

「心配は御無用。地球上では今この瞬間でも、小さなブラックホールが次々にできていて、そして、それらはすぐに消滅している」



CERNがブラックホールを作り出す原理は、「陽子」同士をほぼ「光速」で正面衝突させることによるものである。

しかし、陽子同士のそうした衝突は、宇宙から降り注ぐ陽子が地球にぶつかって四六時中おきているというのである。



それでも、地球はまだそれらのブラックホールに飲み込まれることなく、存在している。

つまり、実験施設でブラックホールを生み出しても、その小さな小さなブラックホールは、すぐに消えてなくなってしまうのだそうだ。



ところで、ブラックホールとは何ぞや?

ブラックホールは「光」をも吸い込んでしまうために、目で見ることができない。

そのため、ブラックホールは人々の頭の中に描いた「概念」でしかない。それでも、歴史上の人々は、この「机上の空論」を巡って、激論を戦わせてきた。



まず、光を閉じ込めてしまう星を想像してみる。

星には、外側のモノを星の内側に引っ張る力「重力」がある。そして、この重力は「星の大きさ」によって変化する(大きい星ほど重力は大きくなる)。

もし、その星から脱出しようとするには、その星が重力で引っ張る力を振り切るほどの「スピード」が必要である。

たとえば、地球ならば、秒速11kmというスピードで重力を振り切れ、脱出が可能となる。



光のスピードというのは、秒速30万km。

もし、光のスピードよりも重力の引っ張る力のほうが大きければ、理論上、光は星の外側に出ることができなくなり、あるはずの星が見えなくなる。

こう考えたのは、引力を発見したニュートンである。

「そこにあるはずなのに、見えない星がある(理論上)」。この発想がブラックホールへの鏑矢となった。



次に現れたのは、天才物理学者・アインシュタイン。

彼の相対性理論に従えば、星の重力は外部のモノを引き寄せるだけでなく、星の存在する「場(空間)」をも、その重さで歪めてしまう。



ということは、重たい星ほど空間は大きく歪み、その星のある場所は「へっこむ」。

たとえば、柔らかい布団の上にバスケットボールを乗せれば、布団がへっこみボールが沈み込む(布団が宇宙空間であり、ボールが星である)。

もし、その星が極度に重かったら、そのヘッコミは「底なし沼」のようになってしまう。つまり、ブラックホールだ。



オニギリをギュッと固く握りしめるように、星をギュッと凝縮すれば、その星はホーガン玉のように重たくなり、宇宙空間を大きく歪めることになる。

もし、太陽を半径3kmにまで凝縮すれば(約46万分の1)、その重さで宇宙に底なし沼の穴があく。地球であれば、半径9mmまで圧縮することにより、そうなる。

この数値を「事象の地平線」と呼び、その星がどれほど圧縮されればブラックホールになるのかを表している。



この「事象の地平線」では、じつに奇妙なことが起こる。

「時間が止まる」のである。



アインシュタインの相対性理論に従えば、重力が増すほどに空間が歪み、時間は遅くなってゆく。

つまり、無限に歪んでいるブラックホールに近づけば近づくほど、時間は遅くなり続け、ブラックホールに達するや、ついには時間が止まってしまうのである。



奈落の底に落ちていくにも関わらず、その落ちるスピードは段々とスローモーションになっていき、完全に落ちたと思った時には静止しているのだ。

信じ難い現象である。しかし、この奇妙な様を見ることはできない。なぜなら、ブラックホールに近づくほどに、光が吸い込まれてしまうからである。

ブラックホールに近づくにつれて、吸い込まれる姿は薄く霞んでゆき、完全に静止したときには、視界から消えてしまうのである。

見えなくなっても存在しているのか?それを存在と呼ぶのか?

あたかも、死後の世界のようではないか。

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ところで、現実として、星はどこまで凝縮されるのか?

星が現在の大きさを保っていられるのは、縮もうとする力と膨らもうとする力が完全に「拮抗」している(釣り合っている)からである。

縮もうとする力が「重力」であり、膨らもうとする力が「熱エネルギー」である。



ところが、星が年老いるにつれて、膨らもうとする力が衰えてゆく。

そうすると、星は自らの重力で収縮してゆく。

縮むといっても限界はある。その限界に達した星の一つが「白色矮性(半径1万km程度)」だ。小さめの星(太陽質量の1.4倍まで)の最後の姿である。

なりは小さいが、その重力たるや強烈である。



もう少し大きな星(太陽質量の3倍まで)になると、「中性子星」というサイズにまで縮む(半径10km程度)。

さらに大きな星になると…、ブラックホールになる。現在の理論では、そういうことになっている。

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白色矮性や中性子星は「肉眼」でも確認できる。

しかし、ブラックホールとなると、そうはいかない。光を一切発していないからだ。

「それでも見たい!」というのは、人間の飽くなき願望である。



欲求あるところに現実あり。そうしたワガママに応える人物も現れた。

行き詰まっていたブラックホール理論に風穴を開けたのは、日本人物理学者「小田稔」氏である。

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ブラックホールは「光」を発しないが、何かを吸い込むときに「X線」を発することが分かっていた。

しかし、X線は地上に届かない。地球の大気圏に吸収されてしまうからだ。

そこで、小田氏は成層圏まで自作の気球を飛ばしてやった。その気球には、彼の編み出した秘密兵器が乗っていた。

それは「すだれコリメーター」と名付けられたもので、スダレのようなシマシマの隙間がある2枚のプレートを重ねて見ることで、X線の「方角」を特定できるものだった(当時、X線は感知できても、その方角は曖昧だった)。



小田氏のスダレにより、かなりブラックホールの所在地が特定されてきた。

その後、世界は彼の研究に乗っかり、1970年にはX線観測衛星「ウフル」が打ち上げられるまでになる。



そして…、ついに…、人類初「ブラックホールの発見」という瞬間が訪れた。

その初のブラックホールは「はくちょう座」の首元にあった。

黒い穴(ブラックホール)が、まさか白い鳥(白鳥)のもとに息をひそめていたとは…。

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その特定のカギとなったのは、ブラックホールの目と鼻の先に位置していた「巨大な青い星」の不審な挙動であった。

その星は、巨大であるにも関わらず、何かの周りを「公転」しているようだった。しかも、たった5.6日という短い時間で。



巨大な星を公転させるには、その星をはるかに上回るさらに巨大な重力で必要である。

それほど、巨大な重力を持つ星ならば、当然見えるはずだ。大きな重力を持つ星ほど大きいはずなのだ。

ところが、そんな星はどこにも見当たらない。見えないのに巨大な重力があるということは…?



その「何か」は、ブラックホール以外には考えられなかった。

その「あるはずの場所」からは、ブラックホール唯一の痕跡ともいえる「X線」が明らかに確認されていた。

こうして、めでたくブラックホールが公式に認定されたわけである(はくちょう座X-1)。

机上の激論は、ここにひとまずの解決を見た。机上の光をさえぎるスダレが、決定打を呼び込んだのである。

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それでも、科学者たちの欲求は治まらない。

いや、むしろこの発見に触発されて、欲求はさらに高まってしまったかのようだ。

「是非、ブラックホールをこの目で見てみたいっ!!」

見えないと分かっていながら…、もはや頭の良すぎる子供である。しかし、この飽くなき欲望こそが、人間の原動力なのでもあろう。



ブラックホール自体は見えないものの、ブラックホールに光が吸い込まれていく様は見えるかもしれない。

その結果、光に縁(ふち)取られたブラックホールの影が見えるかもしれない。それが、ブラックホール・シャドーである。



これを見るには、超超巨大な望遠鏡が必要だ。

そして、その精度は、東京から富士山のテッペンに立つ人の「ウブ毛」を分析できるくらいに正確でなくてはならない。

これが、科学者たちの次なる野望である。



しかし、この野望は決して荒唐無稽な話ではない。

地球上に散らばる電波望遠鏡を連結することにより、地球ほどの大きさの望遠鏡を「仮想化」できる可能性があるのである。

これはまさに「デジタル」の賜物(たまもの)。アナログでは本当に巨大な望遠鏡を造らなければ実現できないことが、デジタルならば、分断化されたものを再統合することが出来るのだ。

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欧米文明は分析に次ぐ分析、分解に次ぐ分解で、世界を断片化してしまったと批判する東洋思想家もいる。

しかし、その断片化された世界は、人間の知恵により再び組み上げることもできる。

現在、科学者たちが試みている計画は、統合のための分解なのである。それは「1 + 1」が「2」以上の答えを生むものである。



「見えないものでも、あるんだよ」

そう詠んだ詩人もいた。それは真昼の星を意味していた。夜になれば見える星である。



しかし、ブラックホールは夜でも見えない。

それでも科学者たちは信じ続けた。まさに闇雲に。

「見えないものでも、あるはずだ」。



ブラックホールは、そうした執念の結晶であった。

そして、その執念は道なきところに道を拓き、その道は白鳥のもとまでつながっていた。

黒を求めて、白に至る。



光があるから、闇もある。

陰陽論には、「陽、実すれば、陰、実する」という考え方がある(陰陽制約)。

ブラックホールの発見は、まさにこの言葉通りのものであった。



「光」を追い続けていた宇宙論は、「闇」を追う時代にまで歩を進めて来ている。

いよいよ、人類は宇宙の真相へと迫る扉を開いたのかもしれない。



宇宙を知る「楽しみ」は尽きることがないようだ。

科学者たちの好奇心は、モノ凄いスピードで湧き出し続けている。さすがのブラックホールでも吸い切れないほどに…。

その好奇心は、いずれブラックホールを脱出できるほどのスピードに達するのではなかろうか?




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出典:コズミック フロント〜発見!驚異の大宇宙〜
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posted by 四代目 at 06:45| Comment(0) | 宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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