2011年10月27日

精子バンクから産まれた兄弟姉妹。みんなの父親はドナーNo.150。


「ジョーエレン」という女性は、15歳になるまで自分の父親のことを知らなかった。

彼女の母親ですら会ったことがないのだから、それは当然といえば当然である。

なぜなら、彼女の母親は精子の提供を受けて、ジョーエレンを産んだのだ。

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母親が見せてくれた資料には、名前のあるべき欄に「No.150(ドナー番号)」と記されていた。

そして、シンプルなプロフィールが続く。

28歳・白人
身長183cm・体重77kg
青い目・薄茶色の髪
職業・ダンサー



ジョーエレンの母親が、「No.150」を選んだ決め手となったのは、自己紹介文に「明るくて楽天家、人生の目標は魂の向上」とあったことだという。

さらに、その精子バンクは精子を「郵送」してくれる唯一の会社だったともいう。



帰巣本能というべきか、人間には「ルーツ」を知りたがる本能が眠っているのかもしれない。それはジョーエレンも同じであった。

そんなある日、彼女は「ドナー・シブリング・レジストリー」というサイトに出会い、歓喜がその本能を目覚めさせた。

このサイトに登録すれば、同じドナーから産まれた兄弟を探すことができるというのだ。



登録から数年後。待望の「姉」が見つかる。

精子ドナーに対しておおむね「肯定的」なジョーエレンに対して、姉は「否定的」な思いを持っていたようだ。母親に「ウソをつかれた」と感じ続けていたのだ。

それでも、二人はなぜか気が合い、やはり兄弟(姉妹)なんだと体感せずにはいられなかった。



ようやく、巡り合えた異母兄弟。事態はここから急展開していくことになる。

そのキッカケとなったのは、ニューヨーク・タイムズ紙の記事であった(2005年11月)。

「Hello, I'm Your Sister. (こんにちは、私はあなたの兄弟よ) Our Father is Donor 150(父親はドナー150)」



この記事が世間を賑わせて以降、同じ精子ドナーから産まれた兄弟が次々と名乗りを上げる。

その異母兄弟の数は、14人にまで広がった。そして、同窓会ならぬ兄弟会も開かれる。

「目が似てる〜」「髪をかき上げる仕草が一緒〜」などなど、兄弟ならではの話題で大盛り上がり。同席した母親たちも満更(まんざら)ではない。

普通に生活していたら、決して接点がなかったであろう人々が、奇妙な邂逅を遂げたことになる。

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ここで皆が気になるのは、当然「No.150」。未だ見ぬ父親(もしくは夫)のことである。

当の父親(ジェフリー)は、カリフォルニアにいた。そして、奇遇にもゴミ箱から見つけ出したニューヨーク・タイムズ紙により、自分が世間の注目になっていることを承知していた。



ジェフリーが精子の提供を始めたのは、美容師の勧めから。

それ以来およそ8年の間、彼は精子のドナーとなり、それで生計を立てていたという。報酬は一回25〜50ドル(3000円前後)。

ジョーエレン等の誕生は、この期間にジェフリーが提供した精子を冷凍保存されたものからだったということになる。



ある日、ジョーエレンのメールに、父親であるジェフリーの写真が届く。

父・ジェフリーが娘のジョーエレンに、自分が「No.150」であることを名乗り出たのである。

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添付された画像に目が釘付けになるジョーエレン。

「やっぱり青い目だったんだ」

複雑な感情が去来するも、最後に残ったのは、どこか暖かい感情だった。



さっそくジョーエレンは、父・ジェフリーに会いに行く。幾人かの兄弟も誘って。

カリフォルニアの父・ジェフリーは、自由な生活を満喫していた。キャンピング・カーに犬やハトとともに暮らしていた。

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「ちょっとエキセントリックな人だった」と後にジョーエレンは語る。

第一印象はおおむね良好のようだ。彼女は一貫して肯定的である。

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むしろ、母親たちの反応の方が芳(かんば)しくない。

会うことも見ることもなかった夫「No.150」を美化し過ぎていたのかもしれない。

若き日の「No.150」は眉目秀麗だったとはいえ、さすがに今は年の波に押されてしまっている。それは母親たちも同様なのだが…。

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人工的な受精・出産に関しては賛否両論があろうが、今はその是非を問わない。

確かな現実として、そうして生を受けた人々が世の中には増えてきている。



彼・彼女たちは周りの人々を見る時、こう思うのだそうだ。

「もしかして兄弟? ひょっとしてイトコ?」

精子バンクは、ドナーたちの行動範囲をはるかに超えて世界に広まっている。植物の種が、自由に空を翔ける鳥たちによって、思いもよらないほど遠くまで運ばれていくように。



かつて、大航海時代の到来により、地球上の国々は交流を始めるようになり、その結果、国境を超えて「血」が繋がるようになった。

そして現在、カタログでパートナーを探し、メール一本でお望みの精子が届く時代となっている。



出典:BS世界のドキュメンタリー
シリーズ 世界に生きる子どもたち
 「“ドナー150”を探して〜精子提供者と子どもたち」


posted by 四代目 at 08:31| Comment(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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