2011年10月09日

次々と解明される「食」の放射能汚染のメカニズム。その最新報告より。


福島第一原発の「放射能」事故から、およそ7ヶ月。

放射能「汚染」の実態・メカニズムが徐々に明らかになりつつある。

汚染の中でも、日本国民の最大の関心事は「食の放射能汚染」であろう。今回は、「コメ」「お茶」「キノコ」の3つのケースで、汚染のメカニズムを見ていきたい。

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幸いにも、日本人の命の糧(かて)である「おコメ」からはほとんど放射性物質は検出されなかった。

なぜだろう?

それは、コメが育つ「土壌」に秘密があった。



コメが育つ土とは、田んぼの「ドロ(粘土)」である。

土の分類の一つに「粒子の大きさ」による分類がある。細かい順に、「泥 → 砂 → 礫(れき)」となる。

泥(粘土)には、その細かい粒子の内部に放射性物質を抱え込める構造(溝のようなもの)があり、泥の中の放射性物質は植物に吸収されにくいのだという。

つまり、田んぼの放射性物質を稲(コメ)はそれほど吸い上げることがない。それは、泥(粘土)が自分の内部に放射性物質を抱え込んで離さないためである。

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土の放射性物質を植物がどれほど吸収するかを示す指標に「移行係数」というものがある。

もし、土の汚染値が「100」で、その内の「10」が植物に吸い上げられるとすれば、移行係数は「0.1」ということになる。この値は、土の放射性物質の10%が植物に移行することを示す。



従来、稲(コメ)の移行係数は「0.1(10%)」と考えられてきた。

ところが、実地試験の結果は「0.0008〜0.017」。土の放射性物質の「0.08〜1.7%」しか稲(コメ)に吸収されないことが判明した(想定の58分の1〜1,250分の1)。

さらに、泥の持つ特異な構造から、田んぼがドロドロ(粘土質)のほうが稲は放射性物質を吸い上げにくい。

つまり、移行係数が0.0008〜0.017しかない稲からは、基準値(500ベクレル)を超える汚染はまず検出されないことになる。



今回、山中の棚田から基準値を超えるコメが見つかったが、この棚田の土質はより「砂混じり」だったのだという(砂からのほうが植物に放射性物質が移行しやすい)。

加えて、森林が近くにあるほうが放射性物質の濃度が高くなりやすいのである(後述)。



次に「お茶」を見てみよう。

関東地域のお茶からは基準値を超える汚染が多数検出されている。

原発から200kmも300kmも離れているのになぜ?



それは、汚染の風が流れてきた時期に、お茶が葉っぱを茂らせていたことに原因があった(お茶は落葉しない常緑樹)。

お茶の葉っぱが放射性物質をキャッチしてしまい、その葉面から吸収された放射性物質は、新芽にまで移行してしまったのだ。

もし、お茶が冬に葉っぱを落とす落葉樹であれば、放射性物質が検出されることはなかったかもしれない。

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しかし、落葉樹である果樹の「果物」からも放射性物質は検出されている。

それはなぜか?

葉っぱはなくとも、幹などに付着した放射性物質が樹内を巡って、果実にまで及んだものと考えられている。

そのため、来年度の対策として樹皮を削り取る(9割の除去が可)、樹皮を高圧洗浄機で洗浄する(5割の除去が可)ことなどがすでに行われている。



最後に「キノコ」。

野生のキノコの汚染が散見される原因は、キノコが「土の表面」から養分を吸収するからだと見られている。

放射性物質は土中深く潜ることはない。せいぜい地表から5cm程度までしか汚染しない。

キノコは植物のような根を持たず、菌糸と呼ばれる白い糸のようなものを地表浅く広げる。そのため、キノコは表面に溜まった放射性物質をことさら吸収してしまうのである。



さらに悪いことには、キノコには「菌根菌」というものがあり、この菌を介して樹木と共生している。

つまり、キノコの集めた放射性物質は、菌根菌を介して樹木に移行することになる。

樹木に移行した放射性物質は葉っぱに溜まり、秋には落葉する。落葉した葉からキノコへ放射性物質が移る……。こうした循環により、森林では長らく放射性物質を抱え込み続けることになる。

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チェルノブイリの汚染地でも、いまだ森林の汚染濃度は高い。

それは、森林のもつ割りと閉鎖的な循環システムにその原因があると考えられている。

前述した山中の棚田のコメから基準値を超える汚染が見つかったのも、こうした森林のシステムの結果と考えられる。



福島で事故の起きた季節は、基本的に西から東へと風が吹く日が多いはずであった(偏西風)。つまり、放射能の雲は太平洋へと流れていくはずだった。

ところが、どういうわけか風は東から南のほうへと吹き、福島よりも南西にある関東地域へと放射性物質を運んでしまった。

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神様の気まぐれなサイコロは、思わぬ風を起こしたことになる。



汚染地域が列島の広範囲に及んだことは不幸なことではあったものの、その汚染が比較的軽度であったことは幸いであった。

今までは、飛散した放射性物質が植物体の表面に付着した汚染が主だったが、表面の放射性物質が流れ落ちてしまえば、今度は土中の放射性物質を植物がどれほど吸い上げるかが問題となる。

各種の作物の移行係数が明らかになってみると、今後、食物への放射性物質の移行は軽微であると考えられる。

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不明な点が多かったため、必要以上に恐れられていた放射能汚染も、研究が進展するにつれ正確に恐れられるようになってきた。

福島の事故は手痛い失敗であったものの、ただでは起きず放射能汚染の実態・メカニズムが明らかになっていくのは有難いことである。

日本の研究成果は、世界的にも価値の高いものとなることだろう。




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出典:サイエンスZERO
「シリーズ原発事故(2)農作物の汚染を見極めろ」


posted by 四代目 at 06:37| Comment(0) | 放射能 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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