2011年10月06日

かつては大型で力強い犬だったというプードル。人間の好みに適応してきたプードルの歴史。


日本で飼われている犬で、最も多いのが「プードル」だそうだ。

8万7,000頭近くが飼われており、プードルの中でも「トイ・プードル」という最も小型のタイプ(3kg前後・20数cm)が「98%」を占める。

(ちなみに、2位・チワワ、3位・ダックスフンド)



この「トイ・プードル」というのは、テディベア(クマのぬいぐるみ)のようなヘア・カットで絶大な人気を博しているのだが、このカットを考案したのは日本人トリマー「江頭重知」氏。

16年前、自信の愛犬・ナッティーに施したカットが雑誌やメディアに取り上げられ、今やほとんどのトイ・プードルのカットの定番となっている。

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この「テディベア・カット」以前のプードルはというと…、

1980年代のディスコ全盛を思わせるかのような、あの「ボンボン・スタイル」だ。

このスタイルを一見した人は、きっとこう思うだろう。

「すごいペットバカぶりだな」と。

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ところが、意外にもこの奇抜なカットは「実用的なカット」であったのだ。

実は、今でこそ「小ささ」がトレードマークとなっているプードルも、元々は「狩猟用の大型犬」だったのである。



狩った獲物(カモなど)が水に落ちると、プードルが泳いで取りに行く。

プードルという語源は、ドイツ語「Pudel(水の中でザブザブ音をたてて進む)」から来ているのだそうだ。



元々のプードルの毛は延々と伸び続ける。しかし、長い毛は泳ぐには邪魔である。

そこで、水の抵抗をへらすためにカットした。顔周りの毛は目にかからないように剃り、胸周りは冷えすぎないように残した。脚の毛もいらないが、足元だけは保護のために毛を残す。

こうして出来たのが、あの珍妙なカットであった。これは500年ほど前のヨーロッパでの話である。



この奇妙なカットのプードルが世間の話題に上らないはずはない。

またたく間に注目を集め、狩猟犬から一転、サーカスのスターとなる。

サーカスの芸をするには、なるべく小さいほうがよい。そこで、小型なプードル同士の掛け合わせが進み、プードルの小型化が進んでゆく。

18世紀には時のフランス王「ルイ16世」のお眼鏡にも適うなど、宮廷や上流階級の奥様方の間で、より小さな「トイ・プードル」が可愛がられるようになった。



日本にプードルがやって来るのは、第二次世界大戦後のアメリカから(1949)。

はるばるアメリカからやって来たのは、黒いミニチュア・プードル(トイ・プードルより大きめ)3頭。

このたった3頭が、今や8万5,000頭以上にまで増えたわけである。



おそらく、プードルの外見が「欧米スタイル(ボンボン)」のままでは、今ほどの隆盛を見ることはなかったかもしれない。

よりナチュラルな「テディベア・カット」こそが日本人の心を掴んだのである。



この辺りに国民の感覚の違いを見ることもできる。

アメリカのコンテストなどでは、奇抜なカットのオンパレードである。

どんだけ「作り込み」が好きなんだろうと思わずにいられない。

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現在、プードルは「スタンダード」「ミディアム」「ミニチュア」「トイ」という4つの公認サイズがある。

これらは小型化させていった結果できたものであるが、人為的な交配には少なからぬ代償もあった。

「遺伝性疾患」である。



プードルの遺伝性疾患としてよく知られるのが、「進行性網膜萎縮症(PRA)」という「失明」に至る疾患である。

ペットに可愛さを求めすぎた可哀想な病気である。

現在「ティーカップ・プードル」というトイ・プードルよりも一回り小さいタイプも人気を集めているが、小さいタイプほど健康上の問題が懸念されている。



犬の規格には「スタンダード」と呼ばれるものが存在し、ブリーダー(繁殖家)たちはその規格に沿ってプードルを育成することになる。

理想のプードル体型は、「アーモンドのような形の眼」、「根元が太く、上を向いたシッポ」、「脚の長さと胴の長さが1:1」などと定められている。



本来、動物は環境に適応しながら姿・形を変えていくものであろうが、ことペットとなると、人間の好みに適応せざるを得ない現実がある。

しかし、人間の好みは「自然環境以上の多様性」に富んでいるため、その要求がエスカレートしてしまうこともままある。

プードルが極度に小型化してゆくのも、その一例であろうし、様々なヘア・カットの歴史もそうであろう。



欧米的な思考は、「いかに自然を人間の支配下に収めるか」という感覚がどこかにあるような気がする。

かたや、日本人には「自然そのままを楽しみたい」という気持ちがどこかにあるようにも思う。

その嗜好は、プードルの嗜好にも現れていることろがあり、最近の日本では、プードルを一切カットせずに、伸びるに任せた毛並みを楽しむ人々もいるのだとか。



散々に遊ばれても、犬は人間といることがよほど嬉しいのだろう。

犬には全てを受け入れる覚悟ができているようだ。

ロバにされようが、アヒルにされようが、パンダにされようが……。

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出典:いのちドラマチック
「プードル 小型化の遺伝子」


posted by 四代目 at 08:02| Comment(0) | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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