2011年09月19日

日本人に「犬食」をやめさせた「憐れみ将軍」徳川綱吉。日本人の心を変えた彼の偉業とは?

日本にも「犬を食べていた時代」があった。

今から300年ほど前まで、犬は「食肉」だったのだ。



犬食文化は「アジアや南太平洋の農耕社会」では珍しいことではない。

現在でも中国では犬が食用とされている(レトルトや冷凍食品まである)。韓国では年間200万頭の犬が食用にされているというし、北朝鮮においても貴重なタンパク源となっている。



逆に「欧米の牧畜社会」においては、犬食は嫌悪されてきた。イスラム圏やユダヤ教などでは宗教上のタブーですらある。

ヨーロッパ人がアジアに踏み込んで来た時、犬を食するアジア人を見て彼らは驚く。「なんと野蛮で未開な民族なのだ」と。その感覚は、我々日本人が「アフリカ人は猿を食うのか」と驚く感覚に近かったかもしれない。

ところが、日本に踏み込んでみると他のアジア諸国とは様子が違う。明治時代の日本では、犬食はほぼ完全に消滅していたのだ。この点において、日本人は欧米人に軽蔑されることはなかった。



なぜ、日本で犬食がなくなったのか?

その大きな転機となったのが、「犬公方」こと「徳川綱吉(第5代将軍)」の登場である。

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綱吉の苛烈なまでの「犬好き」によって、日本から犬食が駆逐されたのである。

犬食が完全になくなったわけではなかったが、綱吉以降、人々が犬食を禁忌するようになったのは確かである。江戸の人々は「朝鮮通信使が肉を食う」ことを野蛮視したという記録も残っている。



日本では、聖武天皇の肉食禁止令(675)以来、犬に限らず「肉食」を「穢(けが)れ」と考えるような風潮が根底にあった。

しかし、それは建前であり現実には犬も含めた肉食は、それなりに一般的であったと考えられる。

ところが、綱吉以降、もともと日本人の底流にあった肉食嫌悪が顕著となるのである。日本で再び肉食が公に始まるのは、開国後の明治以降である。



徳川綱吉の「犬好き」はほとんど「犬ばか」であった。

東北で大飢饉(元禄の大飢饉)が起こっている最中、綱吉の建てた「中野犬小屋(東京ドーム20個分の広さ)」では、10万匹以上の犬一匹ずつに「白米3合、味噌、干しイワシ」を毎日与えていたという。

大飢饉の東北では5万人以上が餓死していた。しかし、綱吉の定めた「生類憐れみの令」により、野生の鳥獣を獲って食うことすら許されなかったという。

このため、綱吉の「生類(しょうるい)憐(あわ)れみの令」は「天下の悪法」とされている。



さらに悪いことには、綱吉の治世中に「忠臣蔵」が起こった。

切腹に追い込まれた主君(浅野内匠頭)のアダを打つべく立ち上がった「赤穂浪士」たち。見事、「吉良上野介」を打ちとって主君のアダを打つ。

しかし、将軍綱吉は「武士の鑑」と賞賛された赤穂四十七士に「切腹」を申し渡す。「忠臣蔵」において、綱吉は完全な悪役になったのである。

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もっと悪いことには、綱吉の在世中には「水戸黄門」もいた。

水戸黄門こと水戸光圀は、「生類憐れみの令」の非を鳴らすべく、将軍綱吉に「上質な犬の皮20枚」を送りつけたという。

やはり、綱吉は「水戸黄門」においても完全に悪役なのである。



こうして、徳川綱吉は見事に大悪人となったわけである。

ところが近年、この天下の悪人を見直す動きが強い。



ドイツ人医師「ケンペル」は、著書「廻国奇観(1712)」に将軍綱吉をこう評している。

「徳川綱吉は卓越した君主である。

彼のもとで全国民は完全に調和した生活を送っている。

(日本人は)他のあらゆる国の人々を凌駕している。」

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当時の日本は、いくつかの点で欧米を凌駕していた。

その一つが、様々な「登録制度」である。

犬や牛馬から、子供や妊婦、鉄砲の所持までが几帳面な「登録制」になっていたのである。

こうした制度がアメリカにできるのは、19世紀以降、日本に遅れること200年以上である。



この緻密な登録制度は、日本の「福祉」を大いに向上させた。

これは、明らかに徳川綱吉の大功績である。

彼は犬を憐(あわ)れむのみならず、「生きとし生けるもの全て」を憐(あわ)れんだのである。



綱吉以前の日本は「殺伐」としていた。

天下泰平から100年が経とうとしていたが、いまだに戦国の気風は抜け切れていなかった。

武士は平気で人を切り殺すし、農村では養いきれない子供を捨ててしまう。宿に泊まった重病人までが捨てられる。おちおち生を楽しんでいられる時代ではなかった。



そこに颯爽と現れたのが、「憐れみ将軍」の綱吉である。

子供のみならず妊婦までをも「登録」させて保護し、人間のみならず犬一匹までをも「登録」させ、そう簡単に殺生できないような仕組みを作り上げた。

確かに行き過ぎた面があったことは否めないが、綱吉がここまで徹底したからこそ、その後の日本人の心の中に「憐れみ」という美徳が根付いたとも考えられる。



幸いにも、綱吉は「生まれながらのお殿様」であった。

悪く言えば「世間知らず」ともなるのかもしれないが、そのお陰で彼は「理想の世界」に生きることが出来た。

綱吉はいい意味で「世間を無視」して、「理想世界」である生類憐れみの令を堂々と公布できたのである。

教育熱心だった父・徳川家光(3代将軍)は、綱吉に「儒学」をみっちりと教え込ませたのだという。綱吉の理想世界は、そうした学問の上に成り立っているのである。



また、綱吉は「徳を重んじる文治政治」を志した。

「武断政治」において、武士は戦うために存在したが、綱吉の「文治政治」においては、武士は「官僚」となった。

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武士は「弓馬の道」から「学問の道」への転換を求められたのである。

綱吉の引いた官僚教育のレールは明治時代にも踏襲され、優秀な官僚たちは日本をあっという間に「近代国家」へと押し上げることとなる。

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徳川綱吉は悪人だったのか?

「世の中を先んじ過ぎた」という点では、迷惑を被った人々も多かったであろう。

しかし、「日本人の心」を育んだという点においては、大いに評価できるのではあるまいか。



「死ぬのが当然」の世の中を、「生きるのが当然」の世の中に変えたのである。

綱吉の理想は、日本人の希求していたものと見事に合致したのであろう。

綱吉以来の美徳は、今の日本人にも確実に受け継がれている。日本人の心は「弱き人々を見捨てることはできない」。むしろ、「弱き人々の側(そば)にいることを誇りに思う」。



綱吉が日本人の「犬食」を断ち切ったことにより、はからずも西欧列強の高い評価へとつながった。

綱吉が「武」から「文」の政治に大転換したことにより、殺伐とした戦国の心はようやく終息した。

綱吉が武士の学問教育に熱心だったことにより、日本の官僚たちが高い能力を身につけることができた。

彼をして暗君とするのは、あまりにも惜しかろう。



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犬ぞり、最後に頼れるのは機械ではない。




出典:BS歴史館 シリーズ
「“お犬様”騒動 隠された真実〜徳川綱吉は名君だった!?」


posted by 四代目 at 21:06| Comment(8) | 江戸時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
独自研究が過ぎる
Posted by at 2012年08月28日 05:58
>独自研究が過ぎる
ブログにそんなこと言っても……
Posted by at 2013年11月14日 12:32
飢饉で人が飢え死んでいく中
犬小屋作ってエサやってただけの大バカ殿
Posted by at 2013年12月08日 00:17
てか東南アジアだって犬食わねえよ
Posted by at 2014年01月04日 22:29
とてもわかりやすくて面白かったです!
学校に課題の参考にさせていただきます。
Posted by 咲く図 at 2014年05月06日 20:19
管理人さんに質問があるのですが・・・
綱吉さんは本当にいぬが好きだったのでしょうか?
もし、綱吉さんではなく正室や側室の人達が好きで綱吉さんに犬を育てさせていたとは考えられないのでしょうか?
Posted by 咲く図 at 2014年05月06日 21:09
ヨーロッパでも東南アジアでも犬肉を食べるところはあるんだが?
Posted by at 2016年01月17日 04:56
見た目だけは理論だてた犬食反対と思って見てみたが「白人様
が犬食を嫌われるからよくねえ」か
捕鯨反対と同レベルだな愚かな一部の日本の面汚しの名誉白人
気取りどもめ
お前らは白人どもに「これはダメ」と言われやがったら言われ
るまましやがるのか?同じ有色人種なら食文化にケチをつけや
がるのはやめやがれとかきちんと反論しやがるんだろうけどな
食文化を見て野蛮とは笑わせやがるすくなくとも当時の欧米は
侵略や植民地支配に明け暮れて有色人種を虫けら見てえに殺害
してやがったからそっちの方が遥かに野蛮で未開じゃねえか
(てめえの国の食文化に合わねえという理由だけで他国の食文
 化を否定しやがるのがそもそも野蛮で未開だがな)

ついでに下のURLでも見てきやがれや(まあ白人ども
全員が
野蛮とはいわねえがな)

【告発】欧米のブルジョア白人共がやっているサメ釣り(餌が「生きた犬」やネコ)が残虐すぎる!!
tp://matome.naver.jp/odai/2136332266101815901
Posted by 通りすがり at 2016年10月01日 11:50
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