少なくとも「アメリカ」は大きく変わった。10年前のアメリカは「最高に強気」だった。
「今は、唯一の超大国(アメリカ)の時代である。
同盟国がいようがいまいが、アメリカはツインタワーが薙(な)ぎ倒された借りを必ず返す!」
ブッシュ政権は、「アメリカの自由民主主義によって、中東を作り変える」と意気込んでいた。
あれから10年。
9.11テロの首謀者とされたビンラディン氏は死に、アメリカはイラク、そしてアフガニスタンを去ろうとしている。
これは勝利なのであろうか?
テロ組織は首謀者を失っていよいよ血気盛ん。テロのニュースが絶えることはない。テロの思想は、イスラム圏を飛び越えて、キリスト圏にまでも飛び火している。
戦場とされたアフガニスタンはグチャグチャに掻き乱されたままである。
もはや、「世界の秩序はアメリカに属しているとは言い難い」。
先月、アメリカは世界最高の信用格付けを失ったばかりだ。
この10年間のアメリカの派手な立ち振る舞いの陰で、アジアと中南米の国々は着々と成長を続けていた。
なかでも中国の成長は、アナリストの予想をはるかに超えた。10年前、中国がアメリカに追いつくのは早くとも2050年頃だろうと言われていた。
ところが、いまや2020年を待たずして中国はアメリカを追い越すだろうと言われている。中国の成長は、この10年間で30年も前倒しになったことになる。
今のアメリカは、上から目線で中国を見下ろす訳にはいかない。
今の中国は、アメリカの巨額な借金を肩代わりする最大の債権国なのである。
アメリカの借金を急増させたのは、9.11テロ以降のイラク、アフガニスタンでの戦争である。その戦費負担は、1兆ドル(77兆円)を超えるといわれている。
これらの戦争は、多大な借金をもたらしただけでは飽きたらず、「アメリカの世界的な名声をも著しく傷つけた」。
期せずして、「戦争でテロは防げない」という現実すら受け入れざるを得なくなってしまった。
はたして、次の10年、アメリカ、そして中国はどんな姿をしているのであろう?
その時、日本はどんな役回りを演じているのであろうか?