この問いに単純明快な回答を与えるのが、「李明博」大統領。
「韓国」の大統領である彼は、自身の仕事を「他国から仕事を受注すること」と割り切って、精力的な毎日を送っている。
「首脳会談」というと、年中行事のように「儀礼的」で、その後に出される声明文も、「当たり障りのないキレイごと」が述べられるのが常である。
ところが、李明博大統領は首脳会談に「数字と実績」、つまり「実利」を求める。「○○億ドルの仕事を受注した」という成果を出すことを、首脳会談の最大の目的としているのである。
彼は元々サラリーマンであった。しかも猛烈サラリーマンであった。29歳で「現代建設」の取締役、36歳で社長、47歳で会長といった具合に出世街道を驀進し、経済界では「神話」的な人物として数々の伝説を残している。
これが、CEO(最高経営責任者)大統領と言われる所以(ゆえん)である。
今回、李明博大統領は、たった6日間でモンゴル、ウズベキスタン、カザフスタンの3カ国を歴訪し、山盛りの仕事を受注することに成功した。
モンゴルでは、インフラ建設、アパート10万戸のプロジェクト、鉱物資源の共同開発。ウズベキスタンでは、ガス田の共同開発およびプラントの建設(事業規模41億ドル)。カザフスタンでは、火力発電所2基の建設(事業規模40億ドル)。
この6日間で、李明博大統領は120億ドル(9兆円)の仕事の受注に成功したという。
李明博大統領は、自身の活動の成果を分かりやすく国民に示すことを第一義としているのである。
かつて、日本の池田勇人元首相はフランスのゴール元大統領に、首脳会談後、「トランジスタ・ラジオのセールスマンのようだった」と言われたことがあったという。
また、田中角栄元首相は、「所得倍増計画」という分かりやすい目標を国民に掲げた。
現在の韓国は、かつて高度成長した日本のようなエネルギーに満ちており、その見事な牽引役を務めているのが李明博大統領と言えるのかもしれない。
意外にも、李明博大統領は「日本(大阪)生まれ」である。
日本の敗戦の後、朝鮮半島へと密航して渡っている。
当然、まったくお金がない。昼に働きながら、高校には夜通っている。「金がなくて中退したとしても、高卒よりは大学中退のほうがマシだ」と考え、必死で肉体労働をして大学への学費を稼ぐ。
「熱い男」の李明博氏は、学生運動に明け暮れる。日韓会談に猛烈に反対し、国家内乱扇動の罪で逮捕。
この学生運動がアダとなり、就職先を見つけるのに難航するも、何とか「現代建設」への就職を決める。いまや押しも押されぬ大企業である「現代建設」も、当時は社員数十人という零細企業であった。
赴任先のタイで、「強盗から金庫を守る」という武勇伝があり、一気に会社の信用を得るや、次々と世界を相手にした大仕事を平らげていく。そして、前述したとおり、サラリーマン神話を打ち立てるのである。
彼が退社した時、「現代建設」の従業員は16万人を超える巨大企業へと成長していた。極貧から身を起こした彼は、5時間以上寝たことがなく、一日に18時間以上働くという猛烈ブリであった。
日本で言えば太閤秀吉のような彼の人生は、何度もドラマ化され、自叙伝「強者は迂回しない」はベストセラーとなっている。
李明博大統領の経済を重視した外交は、韓国国内でも「大企業ばかり支援して、経済の両極化がドンドン拡大している」との批判もある。
それでも、「どうせ海外へ行くのなら、仕事を取ってきてくれた方がよい」という意見も多い。
現在、李明博大統領の目は「リビア」に向いている。
首都陥落により、リビアの復興需要が視野に入ってきているのだ。その規模は1200億ドル(9兆円)とも言われている。
リビア内戦以前、韓国企業はリビアの大型事業の3分の1を受注していたというので、今回の復興需要においても、1200億ドルの3分の1、400億ドル(3兆円)は確実に見込めると睨んでいるそうだ。
すでに、反カダフィ派への接触は始まっている。
彼の猛烈人生は、まだまだ続くのであった。
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