その名の通り、「氷」であろうか?
それとも、世界を騒がせた「火山」であろうか?
「アイスランド」を形容するときには、「氷と火山」が最も相応(ふさわ)しい。
相反する両極の性質をもつ「氷と火山」が、お互いにせめぎ合う世界、それが「アイスランド」である。
北海道と四国を合わせたほどの面積のこの島は、実に若い。
海中から顔を出して、まだ「2000万年」ほどである。
2000万年という時間は、人間の尺度で考えれば、途方も無い時間だが、地球の尺度で見れば、生まれたばかりに等しい。
人間でいえば、まだ「生まれて2ヶ月」といったところだ。
2000万年前、地球の2つのプレートが、左右に引き裂かれ、割れた隙間から「マグマ」が噴出した。
その「マグマ」が固まってできたのが、アイスランド島である。
そのため、アイスランドでは、一部が「北極圏」にありながらも、火山活動が活発なのである。
まず、「氷の島」の様子を見てみよう。
「氷の島」の名に相応しく、国土の10%が「氷河」で覆われている。氷河の暑さは「1000m」を超えるものも珍しくない。冬の積雪は、10mを超える。
一年を通して、最高気温が20℃を超えることはない。冬はさぞかし寒かろうと思うが、じつは最低気温はマイナス5℃程度。
島周辺を流れる「暖流」と、火山の「地熱」のおかげで、緯度の割には冷え込みはキツくないのである。

「火山」はといえば、昨年、ヨーロッパの空の便を大混乱に陥れた「エイヤフィヤトラヨークトル火山」が記憶に新しい。
この火山は、火口を覆う200mもの氷河をブチ破って噴火したという。

今年に入っても、「グリームスヴォトン火山」が噴火した。この火山は、アイスランドで最も活発な火山とされ、ここ100年で、9回も噴火している。
アイスランド全体では、ここ100年の間に、46回の噴火が観測されている。
アイスランドではこれらの火山を含め、およそ30の火山が、今や遅しと噴火の機会を窺(うかが)っているのだ。
まさに、「火山の島」である。
ひとたび火山が噴火するや、国土は「火山灰」に覆われ、真っ黒になる。
真っ白な氷河までが、真っ黒になる。
それでも、雪が降れば一変、真っ白になる。
アイスランドは、この「真っ黒」と「真っ白」の繰り返しである。
アイスランドは、2つのプレート(北アメリカ・プレートとユーラシア・プレート)に乗っかっており、この両プレートは、お互いが離れるように動いている。
(ちなみに、日本列島が乗っかっているのも、アイルランドと同じ北アメリカプレートとユーラシアプレートであり、やはり日本列島も両プレートの狭間に位置する。)

つまり、アイスランド島は、左右(東西)に引き裂かれる格好になっており、年に数センチずつ、地割れが広がっている。
アイスランドでは、この地割れのことを「ギャオ」と呼ぶ。
その引き裂かれた隙間(ギャオ)から、溶岩がギャオーッと噴き出すのである。

溶岩だけでなく、熱水も噴出する。
アイスランドには、世界最大の露天風呂(ブルーラグーン)がある。
その色は、ケイ素により印象的な青色をしている。

この温泉は、自然に湧出したものではなく、地熱発電のために地下水を汲み上げた結果の温泉である。
アイスランドでは、自然に湧出する温泉は、100℃の熱水なので、そのまま入れる代物ではない。
アイスランドでは、高い地熱を利用した「発電」が盛んだ。
発電の20%が、「地熱発電」である。
残りの80%は、「水力発電」。地熱で溶かされた「氷河」による発電である。
原子力・火力は一切ない。
原子力の是非を巡り、日本は大荒れであるが、アイスランドでは「大地の力」を活かして発電しているのである。
発電に限らず、アイスランドには、「クリーン」なイメージが多い。
「空気がキレイな都市(首都・レイキャビック)」、
「母親になるのにベストな国(世界2位)」、
「世界でもっとも平和な国(日本はアイスランドに次ぐ第2位)」、
「もっとも汚職が少ない国」、
「軍隊を持たない国」などなど。
また、日本との共通点として、「クジラ」がある。
アイスランドは、日本・ノルウェーなどと同じ、世界で数少ない「捕鯨国」である。
捕鯨に関しては賛否両論であろうが、アイスランドは、クジラの捕獲は「持続可能」であると主張し、哺乳動物の中で、クジラだけを「特別扱い」する著しく偏った価値判断に、異を唱えている。
火山、温泉、クジラ、そして島国。
日本から最も遠い島の一つでありながら、アイスランドには共感できる側面がいくつもある。
そして、両国が同じ二つのプレートに乗っているという事実も、また奇縁である。
北アメリカプレートとユーラシアプレートの両端に、両国は位置し、お互いの国土の半分づつを、その両プレートに乗っけている。
北極圏としては温暖なアイスランドは、「オーロラ」を見ることができる地域としては、最も暖かい(最低気温マイナス3℃)。
訪れてみるのも面白いかもしれないが、火山の「噴火」で飛行機が飛ばなくなることも覚悟しなければならない。

アイスランドの人々は、「火山」を誇りに思っている。
火山が噴火したからといって、この土地を離れる気はサラサラない。
「火山とともに生きていく覚悟」ができているのである。
それは、「地震とともに生きていく覚悟」がある日本人とも共感できる、自然に対する素直な感情なのかもしれない。
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出典:体感!グレートネイチャー
「プレートが生まれる島」〜アイスランド〜