普段は売れないような難しい数学の本も、スパスパと売れているのだそうな。
問題を解いていく「快感」が、人々を魅了しているというが…。
江戸時代、日本の数学は「和算」という形で、大いに発展した。
そのキッカケは、1627年の吉田光由による「塵劫記(じんこうき)」。
ナゾナゾのように面白い数学の問題が江戸の庶民を魅了し、この本以来、みんなで競うように面白い問題を考え出すようになったという。
日本の神社には、「算額」というものが約820点残されているが、これらは「数学の問題が解けたことを神仏に感謝し,ますます勉学に励むことを祈願して奉納された」ものである。
日本最初の数学ブームの幕開けであった。
「関孝和」などは、「正13万1072角形を使い、円周率を小数点以下11桁まで求めた」という。その数学レベルは、鎖国のなかにありながらも、西欧世界と何ら遜色のないものだった。
これほどまで熱狂した日本独自の数学「和算」が消え去るのは、明治政府が、「和算を廃止し、『洋算』をもっぱら用ふるべし。」としたためである。
現在、ブームとなっているのは、もちろん「洋算(普通の数学)」に他ならないのだが、日本人のDNAには、江戸時代に培われた「和算」の魂が息づいていることも忘れてはならない。
さて、いつの時代にも人々をトリコにする「数学」は、実に「理論的」なのである。
その解答は不変であり、正確な手順さえ踏めれば、誰にでも解答に到達できるものである。
たとえば、三角形の「ピタゴラスの定理」は、およそ20の「簡単な論理」の上に成り立っている。
どんな難しい論理でも、いくつもの「簡単な論理」の上に成り立っていると言える。ただ、難しい論理であればあるほど、より多くの「簡単な論理」が必要になってくる。
数学史上、最も難解な問題の一つとされ、「人類の至宝」とまで評される「オイラーの等式」は、なんと数千もの「簡単な論理」が必要である。
それでも、地道に取り組めば、この「オイラーの等式」ですら解読が可能となるのである。
その達成感が人々を魅了するのか、「オイラーの等式」を解説した本、「オイラーの贈物」は堂々のベストセラーとなっている。
人類の至宝、「オイラーの等式」とは?
この等式に出てくる意味不明な記号は、「e」と「π」と「i」。
「e」は、「ネイピア数」といわれ、その値は「2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 …」。
「π」は、「円周率」であり、その値は「3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 …」。
「i」は、「虚数」という、2乗すると「−1」になるという、現実には存在しない数。「i」は「imaginary」という単語の頭文字で、その意味は「架空」「想像」である。
これら、意味不明で書き表すことすらできない摩訶不思議な記号たちが、「オイラーの等式」の手にかかれば、なんと「−1」という、実に単純明快な回答に落ち着くのである。
この不思議は、じつに魅力的である。
最も複雑な数が、最も単純な数に帰結するのであるから。
しかし、この単純な数までの道のりは途方もない。
この難解な数式を理解しようと頭を悩ます人々は、こう言う。
「もはや、これは『行(ぎょう)』である。」
コツコツと真理を求めていく行為は、修行僧のようだと言うのである。
この辺もまた、たまらない魅力なのかもしれない。
数学的な「思考法」は面白い。
どれだけ難解な問題でも、それは「簡単な問題」を積み重ねた結果であると考える。
難解な問題を解決するコツは、その中に潜む「簡単な問題」を見つけ、「小さな解決」を積み重ねることである。
こうした数学的思考法を解説した書が、「いかにして問題をとくか」。
この本は、50年も前に日本語訳が出版され、いまだに売れ続けているという超ベストセラーである。
本書でよく目にするのが、「似た問題」というフレーズである。難解な問題を解決するためには、それに「似た問題」に解決の手がかりを求めるという手法が多用される。
たとえば、「原子力」の問題を解決したいのであれば、それに「似た問題」を探し、少しずつ解決策を探っていくのである。
現在、数学が見直されてきている背景には、現代の「人間不信」があると言われる。
先進国で問題となる「債務(借金)」は、貸した金が返ってこないのでは?という「不信感」に根差している。
価値観が多様化・複雑化しすぎた結果、何を信じてよいのか分からない。
かつては、宗教がこうした時代の拠り所となったのかもしれないが、現代の宗教は、テロや物騒な事件の温床となっており、おいそれと近寄れるものでもない。
ところが、「数」は実に忠実であり、必ず答えがある。
何を信じていいか分からない時代にあって、これほど信頼できるものがあることは暁光である。
さらに、現実問題の解決策ともなりえるというのだから、ますます万々歳である。
「数学」と聞いただけで、ドン引きしてしまう人も多いかもしれないが、少しでも興味があれば、「語りかける中学数学」を読んでみると良いかもしれない。
この書は、今回の数学ブームの火付け役となった、わかりやすい入門書である。
「まさか自分が」と思っているほど、ハマってしまうかもしれない。
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出典:クローズアップ現代
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