人間の作った「通貨」の人気が急落している中で、燦然(さんぜん)と輝く「通貨」がある。
その通貨は、「スイス・フラン」。
ドル・ユーロ・円の世界三大通貨を押しのけ、通貨ランキング、堂々の第一位である。
スイスの「インフレ率は1%に満たず、経常黒字はGDPの15%に達している」。
ヨーロッパでは、過剰な債務が問題となっているが、スイスの「債務残高はGDPの53%と、ヨーロッパ諸国の債務比率を大きく下回っている」。
自国通貨が強くなりすぎると、輸出産業が打撃を受けるが、スイスの輸出は「堅調に推移している」という。
それでも、スイス企業にとって、通貨が強くなりすぎるのは、ありがたいことではない。
製薬大手のノバルティスは、米ドルベースで9%の増益だったにもかかわらず、スイスフラン建てでは、16%の減益に転じたという。
スイス国立銀行(SNB)は、通貨を安くするための「介入」を伝統的に実施してきた。
しかし、介入の甲斐なく、スイスフランは強くなり続けた。
そのため、スイス国立銀行は、為替介入により「380億スイスフラン(3兆7000億円)を失った可能性がある」という。
これ以上の介入は、「政治的に受け入れられない」。ということは、スイスフランには、まだまだ上値を追い続ける可能性がある。
スイスの強みは、「経済大国ドイツとの密接なつながり」にある。
もともと、ドイツの高い信頼を享受していたのは、「ユーロ」であった。しかし、ドイツの信頼に頼りすぎた南ヨーロッパの各国は、軒並み自国の信頼以上の借金漬けに陥った。
その結果、ユーロ全体の信用は揺らぎ、ユーロは売られゆく通貨となった。
自国通貨が安くなれば、輸出の強いドイツには、力強い追い風となる。
強含んだドイツ経済は、その影に位置する「スイスフラン」をより確かなものにした。
こうして、ヨーロッパを震撼させた金融危機は、期せずして「スイスフラン」の価値を一気に高めることとなったのである。
しかし、スイスフランは買われすぎた。
OECDの購買力平価のデータでは、「スイスフランはユーロに対して42%、米ドルに対して44%、過大評価されている」という。
ヨーロッパの金融危機は、解決したとは言えないものの、ひとまず落ち着いた。そして、来月アメリカのデフォルト懸念が落ち着けば、スイスフランも一息つけるかもしれない。
しかし、もし、アメリカが痴話ゲンカを続けるようなら……、スイスフランの「天井」が見えなくなるかもしれない。
2011年07月28日
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