2011年06月27日

カルシウムに秘められていた生命の神秘。そのカギを開いたのは日本人であった。

成長には欠かせないとされる「カルシウム」。

このカルシウムは、人間の身体を形作るだけではなく、人間を「動かし」、「考えさせて」いることが明らかになってきた。

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カルシウムといえば、「骨」である。

まったくその通りで、人間の体内に存在するカルシウムの99%は、「骨か歯」である。

はて、残りの1%は?

血液の中に存在し、そのまた1万分の1は、「細胞」の中に存在する。そして、この細胞内の微量のカルシウムが、生命のカギを握る。



人間の体内には約1kgのカルシウムがあるというが、その1%は10g、そして、そのまた1万分の1は「1mg」。

細胞内に存在するという、たった1mgのカルシウムがなければ、我々人間は、動くことが出来なければ、考えることも出来ないという。



細胞内のカルシウムは、その「濃度」を変化させることにより、筋肉を動かしたり、神経伝達物質を放出したりする。

そのスピードたるや驚異的に速く、1秒とかからない。

細胞内の一器官である「小胞体」が、一瞬でカルシウムを放出したり、吸収したりすることで、細胞内のカルシウム濃度は変化し、それが体全体に伝わる。

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筋肉のカルシウム濃度が高くなれば、筋肉は収縮し、それが「動き」となる。

神経のカルシウム濃度が高くなれば、情報が伝達され、それが「思考」につながる。

カルシウムの機能が高ければ、文武・知勇に優れることができるというわけだ。



カルシウムの主役と思われていた「骨」は、実のところ、カルシウムの「貯蔵庫」に過ぎず、カルシウムの本当の真価は、細胞内のたった1mgのカルシウム(正確にはカルシウムイオン)が握っていたことになる。

細胞内のカルシウムが、ごく微量であることにも意味がある。

細胞にとって、カルシウムは「毒」であり、多量のカルシウムは細胞をドロドロに溶かしてしまう。

ごく微量の濃度を巧みに調節することで、毒は薬と変じ、最大の効果を得られるのである。



カルシウムは、生命誕生をも左右する。

精子と卵子が結びついた時から、カルシウムは働き始める。というよりも、カルシウムが働かなけば、生命は正常に誕生できない。



受精した瞬間、卵子は外側に膜を張り、他の精子の侵入を防ぐ。この防御膜を作るのが、カルシウムの最初の仕事である。

カルシウムの機能を停止した実験では、卵子に膜はできず、無数の精子が受精してしまい、混乱は極みに達する。



受精後、細胞分裂を起こすのも、カルシウムあってのことである。

カルシウムなくしては、あらゆる生物が単細胞生物の枠を出ることが出来ないのである。

生命誕生から、今この一瞬に至るまで、カルシウムが働きを止めることは決してない。



単なる骨の材料と思っていたカルシウムが、生命活動の核心であったのである。

それを発見したのは、江橋節郎氏。

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彼が学会でカルシウムの新しい説を発表したとき、その説は全否定され、世界中の研究者たちから腹を抱えて笑われたという。

カルシウムは骨を形作るという「無機的で死んだイメージ」が強く、生命のダイナミズムに関係しているとは、どうしても信じてもらえなかったのだという。

ところが、今やカルシウムが筋肉を動かすことは広く知られ、研究者の間では常識化している。

それもこれも、江橋氏の確かな研究のタマモノであることは間違いない。

世界が否定している間にも、日本ではカルシウムの研究が盛んになされ、現在、この分野は日本人の独壇場が続いている。

そして、カルシウムは、いよいよ再生医療の現場で活躍せんとしている。



「先天性心疾患」という病気は、新生児の1%に見られる、心臓の壁に異常がある病気である。

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今のところ、心臓の壁を補う手術が、成長のたびに必要とされている。

ところが、万能幹細胞とカルシウムを組み合わせた壁を、心臓に移植すれば、壁は心臓とともに成長し、度々の手術をしなくて済むようになるという。



未来の明るい医療は、カルシウムが運んできてくれるのかもしれない。

その分野で活躍するのが、日本人であることは、大変喜ばしいことである。





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出典:サイエンスZERO
「シリーズ・細胞の世界(3)生命を動かす“魔法の金属”」


posted by 四代目 at 07:19| Comment(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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