女スズメバチたちは、男たちの精子以外、何物をも必要としない。
実際、オスが登場するのは、受精の時(秋口)のみであり、オスは女王バチに精子を渡すや、短い命を終える。
働きバチというのは、全て「メス」であり、オスは全く働かない。
不幸にも女王バチが死んでしまうと、その巣は絶滅してしまう。
なぜなら、一つの巣には一匹の女王バチしかおらず、代わりのメスが卵を産んでも、オスしか生まれない(未受精のため)。オスは何もしないので、巣は「穀潰し」だらけとなり、ほどなく滅亡となる。
江戸の大奥は、女だらけの独立した社会であったが、スズメバチの社会も、女たちの作り上げた理想郷なのである。
人間の場合、女性は戦闘要員とはならないが、女スズメバチは昆虫界きっての「最強戦士」である(オスは毒針すら持たない)。
一つの巣で、年間100kgもの昆虫を平らげるというから驚きである。
働きバチが捕らえた昆虫を食するのは、成虫ではなく「幼虫」である。成虫は幼虫から「甘い汁(人乳に近い組成)」を頂戴する。
女性優先かつ子供優先である。
幼虫たちが増えまくる秋、いくらエサがあっても足りなくなる。
そうなってくると、スズメバチは「ミツバチ」の巣を襲撃すべく遠征の軍を起こす。
首尾よくミツバチの巣を制圧した暁には、あふれんばかりの食糧が手に入る。
しかし、返り討ちに会うこともある。
多数のミツバチに覆い被さられ、抑え込まれてしまうと、スズメバチは熱で蒸し殺されてしまう。
ミツバチのこの技は「蜂球」として知られるが、この技が使えるのは「日本ミツバチ」だけである。
この技を持たない「西洋ミツバチ」に、スズメバチを撃退する術はなく、むざむざと死を待つより他にない。
西洋ミツバチが日本にやって来たのは、明治以降であるが、日本での「野生化」は確認されていない。
日本に多数生息するスズメバチが、西洋ミツバチの野生化を阻止しているのである。
日本ミツバチのみならず、「日本人」もスズメバチとは長い付き合いであり、その関係は深い。
長野県の南部、伊那地方ではスズメバチの幼虫やサナギを食してきた伝統がある。
一方、お隣の静岡県では、お茶の栽培にスズメバチを重宝してきた。スズメバチが害虫をやっつけてくれるためである。
そのため、静岡県の農家は、長野県にスズメバチを捕り過ぎないようお願いしている。
また、スズメバチの巨大な巣は、子孫繁栄の「縁起物」とされ、日本各地で尊ばれている。
古き日本人にとって、スズメバチは恐ろしいだけの存在ではなく、ありがたい神様でもあったのである。
台湾にも、日本と同じようなスズメバチ信仰があると聞く。
片や、中国にはスズメバチを食する地方はあるものの、信仰があるとまで聞かない。
日本古来の思想には、略奪的な影は薄く、むしろ共存共栄の姿が見え隠れしている。
日本では、武士が実権握って以降、女性は裏方に回った感があるが、古代日本においては、女性が権力を握っていた時代も多くある。
男系優勢の現代日本は、いまいちパッとしなくなってきた。
女系社会を堅持するスズメバチは、繁栄を欲しいままにしている。
学ぶ気にさえなれば、何にでも学ぶここは出来る。
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出典:ダーウィンが来た!生きもの新伝説
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