2011年06月05日

ならず者は本当にならず者か?「カダフィ大佐(リビア)」。国連演説にみる別の顔。

現在、国連軍の空爆を受けている国、「リビア」。

この国の最高指導者は「カダフィ大佐」である。

「砂漠の狂犬」、「アラブの暴れん坊」、「頭のテッペンから足の爪の先まで狂っている男」などなど、彼の強烈な個性を物語る、楽しい「あだ名」を山ほどもつ男である。



リビアが大規模に爆撃されるのは、これで二度目である。

1986年、アメリカのレーガン大統領は、カダフィ大佐の暗殺を決意し、リビアの首都トリポリを攻撃。300発の爆弾を投下。48発のミサイルを発射した。

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これに先立つ中東戦争以来、リビアはイスラエルと激しく敵対。1978年にイスラエルと和解したエジプトを猛烈に非難。

その後の数々のテロ事件との関与疑惑とともに、1979年、リビアはアメリカから「テロ支援国家」の指定を受ける。

レーガン大統領のリビア攻撃は、アメリカ人が死んだテロ事件(西ベルリン)に起因したものだった。



カダフィ大佐は、あらゆる強国を敵に回し、時には実弾攻撃をくらいながらも、今なおしぶとく生き抜いている。

アメリカ、イギリス、フランス、ロシアなどとの交渉は「お手のモノ」。国際社会の酸いも甘いも知り尽くし、影に日向に、生き抜いてきた。



2009年、その悪名高き「カダフィ大佐」は、国連で演説をかます。

当初の割り当て時間であった15分を悠々と無視し、彼の演説は1時間半を越えた。

リビアを「ならず者」国家と呼ぶ、西側先進諸国に冷笑されたこの演説は、発言の過激な部分を誇張され、国際社会の批判の対象となった。

というのも、この演説の内容は、国際社会では「タブー」とされる爆弾発言の連続だったからである。

しかし、彼の演説は、過激ではあるものの、我々に「世界の矛盾」を考えさせる一助となるものであった。

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カダフィ氏は、国連の存在意義に疑問を呈す。

平和を大儀とする国連は「過去の65の戦争を防がなかった」。「それらの戦争には何百万人の命を奪った8つの大きな戦争を含んでいる」。



彼は国連の常任理事国が「偏った地域」にあることを懸念する。

「ある国には拒否権があり、別の国にはない。ある国には永久の席(常任理事国席)があり、別の国にはない。」

現在の常任理事国は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国。これらは皆、第二次世界大戦の戦勝国であり、北半球の国々のみである。

「これが正義であり、民主主義か?」。「非民主的な構成であり、圧制的な独裁である」。



アフリカについて語る。

「アフリカは植民地化され、不正をされた。彼らはアフリカを動物のように見なし、奴隷取引をした。」

「ヨーロッパは、石油・野菜・食品・家畜と人間だけでなく、金・銀・銅・ダイヤモンド・鉄・ウランと他の全ての価値ある鉱物を持ち去った」。

ヨーロッパではアフリカからの移民を問題視するが、彼は反論する。

「移民を止めるためには、この富を返す決意がなければならない」。「彼らにはそれを追い求める権利がある」。



カダフィ大佐は「イタリア」を評価する。

「イタリアは植民地化が間違っていたと認めた。イタリアは謝罪し、植民地時代を償っている(毎年2億5千万)。」

「植民地化を決して繰り返さないように、それを罰すること、補償を支払わせることが必要である」。



アメリカの「オバマ大統領」を評価する。

「彼は声をあげて、核兵器廃絶を求める。これは我々が拍手喝采することである。」

「かつてのアメリカは、リビアの子供たちに毒バラ(爆撃を意味する)を送ったものだ」。



カダフィ氏は、国連が防ぐべきであった、かつての戦争を語る。

「朝鮮戦争では、もう少しで原子爆弾を使うところであった。」

「スエズ運河戦争では、何千ものエジプト人が殺された。国連があったのに。」

「ベトナム戦争の12日間で落とされた爆弾は、第二次世界大戦4年間で使われた爆弾以上だった。300万人の犠牲者が出たと言われる。」

「国連は、パナマで4,000人の市民を殺し、独立国家の大統領を、犯人として連れ去り、刑務所にブチ込んだ」



カダフィ氏が、和解を試みて失敗した「イラクとクェート」。

「イラク戦争は、すべての悪の源。イラクへの侵攻は国連憲章違反である。イラクは独立国であり、総会の一員である。」

「イラクを攻撃したかったがために、国連憲章はゴミ箱に入れられ、無視された。」




カダフィ氏は、国連が一連の戦争行為に対して、充分な調査と責任追及を行っていないことを批判する。

「なぜ、フセイン大統領は死刑にされたのか?処刑はあいまいなままである。国連はそれの答えを出さなければならない。彼は国連加盟国の大統領である。」

この戦争では、捕虜もひどい虐待を受けた。

「彼らは、犬をけしかけられ、男性は強姦された。これは前例がない。捕虜たちは、国連加盟国で強姦された。」



アフガニスタンにおける戦争は?

「なぜ、アフガニスタンに敵対しているのか?」

「なぜ、タリバンに敵対しているのか?」

「ビンラディンは、タリバンの出身ではなく、アフガニスタンの出身でもない。」

「ニューヨークを攻撃したテロリストたちは、アフガニスタン人でも、タリバンでもない。」

「なぜ、アフガニスタンに行って攻撃するのか?」



ソマリアの海賊問題。

「ソマリ族は海賊ではない。海賊は我々自身である。なぜなら、我々がすべての漁場を開拓したからだ。」

「我々は、彼らの経済と彼らの地域の海を徐々に蝕んだ。我々は侵略者である。」

「ソマリ族は、子供たちの食べ物である彼らの海を守らなければならなかった。彼らは身を守るために海賊に変身したのだ。」

「すべての国は、有害廃棄物をソマリア沿岸に投げ捨てるのを慎まなければならない。」



ウイルス問題。

「薬は無料であり、ワクチンは無料である。」

「資本家の企業がワクチンを売って金を儲けてはならない。そうでなければ、彼らはウイルスを生産し、ワクチンを高値で売るようになる。」

「薬は無料で、売り物ではないと宣言しなければならない。」



以上、カダフィ氏の演説は、どこかの理想主義者の言葉のようである。とても世界の極悪人の言葉とは思えない。

世界の嫌われ者・カダフィ大佐は、先進諸国の急所をモロに直撃したがために、この演説は黙殺された。

カダフィ大佐の演説には正論が多いものの、言葉づかいや表現が、ついつい過激になってしまうので、揚げ足を取るのには、まったく都合が良い。

実際、報道などで部分的に取り上げられるのは、そういった部分であり、彼の演説の主旨を大きく外すものである。



彼を愚者と見なすのも良い。しかし「愚者にも一得」はある。

確かに、彼の過去には非難すべきところが、山とある。しかし、だからといって先進国に非難すべきところが無いとは言い切れない。

世界広しといえども、一国をあずかる立場の者が、公の場で面と向かって、先進諸国の非を鳴らすのは、カダフィ氏くらいであろう。

恐るべき肝の持ち主である。彼には怖いものがないのであろうか?



現在、リビアでは反政府活動が過激化し、国連軍はカダフィ氏を敵とみなし、街を爆撃した。

その爆撃で、カダフィ氏の息子一人と孫三人が死んだ。かつて、レーガン大統領の爆撃でも、彼は娘一人を失っている。

欧米諸国は、カダフィ氏の子ども達の死を「然るべき報い」だとしている。ビンラディン氏殺害のように。

カダフィ大佐に味方がいないわけではない。ロシア、中国は、今回の爆撃に難色を示し、南アフリカも爆撃を非難している。



当のリビア国民はどうなのであろうか?

客観的な数字を見ると、カダフィ氏の独裁が国民を苦しめているばかりとも言い切れない。



1969年の無血革命によってカダフィ氏が政権を握って以来、石油収入は激増。そのお金で、家・自動車・病院・工場など、国民が必要なものを整備。

リビアの生活必需品は、非常に安価。彼がジャマーヒリーヤ(イスラム社会主義)と呼ぶ、経済システムの成果だという。

教育費に関して、国公立の学校はすべて「無料」。そのおかげで、リビアの識字率は82.5%と高水準。隣りのエジプトは57.7%、チュニジアは74.2%と、リビアよりグッと悪い。

統計の数字からは、カダフィ氏の別の顔が見え隠れしている。



カダフィ氏の政権は、41年続いている。これは世界で最長の政権である。

一方的な「悪」が、これほど続くものだろうか?

中国・三国時代の「曹操」は、歴史上、長らく悪の代名詞とされてきたが、今になって、見直す向きもでてきている。

カダフィ氏も、このまま悪として葬り去られる可能性が高いが、評価すべき面もないとはいえない。



「多極化した世界という言い回しを考慮しなければならない。多極化とは極が対立するということである。我々は、すべての国が平等である世界に、極がないようにしたい。」

「この地球は、超大国だけのためにあるのではない。」

これらは、世界のならず者・カダフィ氏の言葉である。

「ならず者(Rogue)」とは、超大国に不都合な人物のことに他ならない。



関連記事:功罪ともに深いカダフィ大佐。その死に想う。


出典:国連総会2009年9月23日 カダフィのスピーチの内容

BS世界のドキュメンタリー 「最愛の敵 カダフィ」
posted by 四代目 at 10:11| Comment(0) | 戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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