一つの巣には、一匹の女王バチ、一万の働きバチ(メス)、一千のオスのハチがいる。オスのハチは、生殖が終われば巣から追い出されてしまうので、常時いるわけではない。
ミツバチ社会は、上下関係というよりは、見事に役割分担をしているといったほうが正しい。お互いに仕事がかぶらないように、自分のやるべきことが明確に決まっている結果、ミツバチの世界には社会性が生まれるのである。
女王バチはひたすら卵を生む係であり、それ以外の仕事は働きバチが担当する。
働きバチの仕事は多岐にわたるが、仕事の内容は生まれた日数によって、どんどん変わってゆく。
生まれてからの24日間は巣の中で働く「内勤」である。「掃除」から始まり、「育児」、「巣作り」、「ミツの管理」、「門番」と、4〜5日程度で、どんどん出世してゆく。
その内勤を立派に勤め上げて初めて、花のミツを集めるという重要な「外勤」につくことができるのである。働きバチの寿命は1ヶ月なので、晴れの舞台である「ミツ集め」は1週間ほどということになる。
働きバチは、死ぬまで働き続けているかと思っていたら、そうではない。働いているのは全体の2〜3割程度で、ブラブラしている奴らのほうが多いという。人間で言えば週休5日といったところか。
ミツバチはどうして「ミツ」のありかを発見できるのか?
ミツバチには、人間には見ることができない「紫外線」が見えるという。
菜の花は我々にとって「黄色」一色である。ところがミツバチは紫外線が見えるので、「ミツ」の部分が黒く見える。「ミツ」は紫外線を吸収するので、色がなくなるのだ。
ミツバチたちは、あてずっぽうの花に顔を突っ込んでいるわけではなく、「ミツ」を目で見て、確実に「ミツ」がある花に顔を突っ込んでいたのである。
ちなみにカラスも「紫外線」が見えるというから、紫外線が見えない人間はマイナーな生物なのかもしれない。
「ミツ」を巣に持ち帰ったミツバチは、喜びのダンスをするという。
「8の字ダンス」と呼ばれるこのダンスは、ミツの発見が多いほどに激しくなる。大発見に大興奮するのである。
興奮が大きければ大きいほど、他のミツバチにも興奮が伝染し、みんなでプルプルと踊りまくり、一斉にミツ場を目指すのだという。
ちなみにミツバチには「耳」がなく、踊りの興奮は「ブンブン」という音ではなく、振動で伝わる。我々にとってハチの羽音は「ブーン」という音で、ハチの巣も「ブンブン」と騒々しいのだが、当のミツバチには耳がないのだから、彼らにとって世界はつねに「静寂」そのものなのであろう。
昆虫は変温動物であり、自分の体温を一定に保つことはできない。ミツバチも変温動物であるが、彼らは智恵によって「体温」、ひいては「巣の温度」を絶妙にコントロールする。
彼らの目指す温度は「35℃」。この温度が「極上のハチミツ」をつくる温度である。ハチミツづくりのキモである「酵素」が最も活発に働く温度である。
夏の暑いときは、巣の中が外気以上に高温になる。そこで、羽を扇風機がわりにして、巣のフチから一斉に外気を内部に送り込む。
寒いときは、中心部に集まって、「飛翔筋」という飛ぶための筋肉をブルブルと震わせて発熱する。
温度のコントロールは、一匹では決してできない、団体の強みを最大限に活かした技である。
近頃、東京の都心で「養蜂」が営まれているという。
ビルの立ち並ぶ銀座、赤坂などでも、街路樹、庭園などに意外と花は多いのだそうな。
都会でミツバチを飼うことにより、花の受粉が促され、実をつける植物が増える。そうすると、その実を食べに小鳥たちがやってくる。小鳥たちは虫を食べてくれる。
人間により断絶された生態系の循環が、ミツバチの仲介により復活するのだ。ミツバチは動物と植物をつなぐ、とてもありがたい存在なのである。
小さいからといってミツバチを軽視することは決してできない。アメリカではミツバチが消えたと大騒ぎをしている。
ミツバチは臆病な昆虫なので、ちょっとした環境の変化でも、すぐに生息できなくなってしまうのだ。とくに「日本ミツバチ」はデリケートである。小さい害虫を殺すはずの農薬が、ミツバチをあっさり追い出してしまう。
人間たちは自然に対して、無知であることに気づいていなかった。
浅智恵にうぬぼれて、他の生物の領域を侵し続けた結果、自らの首を絞めていたことに気づかなかった。
見えないことろで人間を支えている生物はたくさんいたのだ。
そろそろ他の生物に迷惑をかけずに、静かに暮らしても良い頃なのかもしれない。
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出典:アインシュタインの眼
「ミツバチ〜驚異の団結力!」

