2011年05月16日

サハラ砂漠から日本へ電気を送る、気宇壮大な計画が始まっている。

日本の電気を「サハラ砂漠」でつくる。

そんな荒唐無稽な計画が、実現へ向かって歩を進めている。

サハラ砂漠の日照は、多いところで日本の2倍近く。太陽光発電にもってこいの場所だ。ところが、日本からの距離は1万キロ。どうやって電気を運ぶのか?



送電線は「穴の開いたホース」に例えられるように、運ぶ距離が長くなれば長くなるほど、損失が大きい。なぜかといえば、電線には「抵抗」があり、電気が抵抗を受けるたびに、せっかくのエネルギーが熱となって失われるからである。

では、「抵抗」のない電線はないのか?

あるのである。「超伝導」という電線は、冷やせば「抵抗」がゼロになる。通常の電線を一般道路とすれば、「超伝導」電線は高速道路。信号のたびに止められるロスがまったくない。

日本で開発された超伝導「ビスマス」は、マイナス163℃(超伝導としては高い温度)で、電気抵抗がゼロになる。「ビスマス」の電線を「液体チッソ(マイナス196℃)」に浸すことで、送電ロスのない夢の電線ができあがる。

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この実験はすでに成功している。理論的には、サハラ砂漠から日本まで、電気を失うことなく送電することができるのである。



砂漠が太陽光発電に好都合な理由は、もう一つある。

砂漠の砂から、太陽光パネルの原料である「シリコン」を作れるのである。

砂漠の砂の成分は「二酸化ケイ素(SiO2)」。これを「炭素(C)」とともに熱すれば「一酸化ケイ素(SiO)」となり、さらに「炭化ケイ素(SiC)」とともに熱を加えると、見事「シリコン(Si)」ができあがる。

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この発想は、製鉄と同じ発想である。製鉄は「鉄鉱石(Fe2O3)」と「コークス(3C)」を炉で加熱して「鉄(Fe)」をつくる。

シリコンも鉄も、素材にくっついている余分な酸素(O)を炭素(C)で取り去って作るのだ。製鉄会社は、砂漠の砂からのシリコン作りに、すでに乗り出してきている。

鉄も太陽光パネルも、かつてはニッポンのお家芸。ここに来て、夢の共演が実現しつつある。



「サハラの電気を日本へ」という構想は大胆であるが、全体図はもっと大胆である。世界中を電線で結ぼうとしているのだ。

世界のどこかは常に「昼」であり発電できる。「昼」の電気を「夜」の地域へ送れば、太陽光発電は24時間稼動可能である。

この計画にはアラブ産油国もノリ気である。彼らも「石油枯渇」後のビジョンを必要としているのだ。

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今のところ、原発を停止すれば、その不足を火力発電で補うという、綱引きの発想しかなかったが、このところ新エネルギーがメキメキ力を伸ばし、原発・火力の二頭体制をブチ壊しにかかっている。

問題は、原発や石油の既得権益者が、指をくわえて見ているかどうか?新たな利権争奪戦が懸念される。



困難はあれど、夢と希望のある話である。

かつては、ラクダの商隊がシルクロードを往来していた時代があったが、21世紀は、シルクロードが「電気の道」となる時代になるかもしれない。




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出典:サイエンスZERO
「サハラ砂漠に 太陽光発電基地をつくれ!」
posted by 四代目 at 07:01| Comment(1) | エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
運搬中の放電は、水素など燃料変換効率と、どっちがマシなのだろうか。
Posted by   at 2018年05月15日 01:04
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